2004 Fiscal Year Annual Research Report
多元化する社会における「共生」のための公教育の意義と限界
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15653002
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
阪口 正二郎 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (60215621)
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Keywords | リベラリズム / 立憲主義 / 政教分離 / 多文化主義 / リベラル・デモクラシー / 公教育 |
Research Abstract |
16年度は、15年度に明らかにした、リベラル・デモクラシーにコミットした社会における立憲主義のあり方と、その下での公教育の役割を前提に、それを具体的な形で示すために、アメリカ合衆国における宗教的原理主義からの公教育への挑戦と、フランスにおけるスカーフ問題に示されるイスラム原理主義からの公教育への挑戦を取り上げて、これらの挑戦の持つ政治哲学的な意味を明らかにすると同時に、これらの挑戦に対するリベラル・デモクラシーにコミットした社会のあるべき応答について憲法学の観点から分析し、後掲の論文(『リベラリズム憲法学の可能性とその課題』)に取りまとめた。具体的には、従来これらの二つの挑戦は、政治哲学的には多文化主義からの挑戦として、また憲法学の観点から見れば信教の自由と政教分離対立の対立を示すものとして、同じ問題を提起するものであると解釈されてきたが、リベラル・デモクラシーの立場から立憲主義のかたちや、その下での公教育の役割を構想する場合、これらの二つの挑戦は全く異なった意味を持つものであり、リベラル・デモクラシーの立場からは異なった対応をすべきものであることを明らかにした。リベラル・デモクラシーの観点から見た場合、アメリカ合衆国における宗教的原理主義からの公教育への挑戦は、リベラル・デモクラシーというプロジェクト自体からの「退出」を意味するものであるのに対して、スカーフ問題に示されるイスラム原理主義からの公教育への挑戦は、当該プロジェクトの内容への「発言」を意味するものであり、前者の要求を受け入れることはリベラル・デモクラシーの放棄につながる可能性があるが、後者の要求はリベラル・デモクラシーの改良につながる可能性があるため受け入れる余地が十分あることを立証した。なお、16年度の研究の成果は、後掲の法科大学院の教材として作成した『ケースブック憲法』の中にも設問の形で取り入れることができた。
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Research Products
(2 results)