2003 Fiscal Year Annual Research Report
遺産承継をめぐる合理的行動分析と相続法制の将来――現代家族の変化のもう一つの面
Project/Area Number |
15653005
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
林田 清明 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (50145356)
|
Keywords | 相続 / 家族 / 遺産分割 / 合理的行動 / 非合理性 / 遺言 / 遺贈 / 相続財産 |
Research Abstract |
今年度は、理論面の研究として、わが国における相続制度に関する文献や理論の展開と成果をフォローして適用可能な理論を検討した。とくに合理的行動分析に基づいた文献やデータを調査・検討して、これらを参考にして相続や財産の移転面での法的主体の合理的選好と意思決定のあり方を探求した。仮説のための視点として合理的選択行動モデルに基づいて、わが国の相続や家族財産の移転および家族領域での応用の可能性を考察した。 現代の相続や遺産分割に関する調査とデータの収集として、相続と実質的な競争関係にある、生命保険会社、銀行・信託系銀行・高齢者支援協会など非営利法人をはじめとする民間の団体、および年金関係の機関、また、仲介・斡旋する機関である、日本公証人連合会はじめ主要な公証役場および各弁護士会の遺言センター、家庭裁判所などへの調査およびインタビューを行い、また各種実態的データや統計等を収集した。これらを基にして、多様な要因が介在する相続の場面で人々がどのような行動を取っているかの分析を行った。 これらのモデルとデータをベースとして、法学的視点から分析したが、とくに相続問題や広く家族財産の移転という問題においては、伝統的に非合理的行動が対象となると考えられてきた側面があるため、被相続人や相続人あるいは家族など利害関係者の行動様式や意識を考慮する必要があった。このため、調査データと理論面での研究を深める必要がある。また、次年度における課題として、理論的・実証的研究と検討の結果得られる結論と法学的検討結果とを考慮に入れて、研究をさらに精緻化する必要がある。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 林田清明: "現代家族の変化と相続法制--相続法の経済分析の試みと素描"会計検査研究. 27号. 25-38 (2003)
-
[Publications] 林田清明: "法と経済学の方法と可能性--伝統法学との対比から"経済政策とアカウンタビリティ:制度設計と人づくり(日本学術会議経済政策連絡委員会〔編〕). 71-78 (2003)
-
[Publications] 林田清明: "民事判例研究<早稲田大学江沢民主席講演会名簿提出事件控訴審判決>東京高裁平成14年1月16日、判例タイムズ1083号295頁、判例時報1772号17頁"北大法学論集. 54巻2号. 541-561 (2003)