2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15653013
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡部 洋實 北海道大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (10204017)
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Keywords | 日本の近代化 / 近代化エートス / 経済学 / 高等専門教育 / 教養主義 |
Research Abstract |
本研究は、明治中期から昭和初期までを対象にして、日本人の近代化エートスの形成において経済学の研究・教育がどのような関連をもっていたのかを明らかにしようとするものである。 本年度は研究の初年度にあたることから、明治中期〜昭和初期の日本における経済学及び関連する社会思想・哲学などの主要な著作の収集・整理に重点を置いた研究を行なった。資料には、社会一般の経済学の受け止め方とその影響・期待などを調べる目的で収集した、当時の高等教育機関における経済学の教育体制、スタッフ・在学生並びに卒業生の経済学観・経済学への期待、教育の成果などに関する論文・記事が含まれる。これらは、神戸高等商業学校(現神戸大学)・小樽高等商業学校(現小樽商科大学)・和歌山高等商業学校(現和歌山大学)に保管されていた学内雑誌の記事(スタッフ並びに学生の執筆による論文・随筆・座談会等)、同窓会誌の記事、講演会の記録、授業概要等からなっている。 収集した文献・資料の仔細については、現在、整理・分析中である。そのうち、大正期の高等専門教育を見る限り、経済学は、工業技術教育に対する「プラクティカルな商業教育」を目標としながら、実態としては、「実業に通じる」よりも、産業エリートの「教養」たることに重きが置かれていた。大正末期〜昭和初期における学生の社会問題への関心の高まりの一部は、当時の風潮だけでなく、「プラクティカル」なものに対して一定の距離を置こうとする「教養主義」に基づくと思われる。尤も、「実業」に就いた卒業生の中には、国民経済・企業経営の近代化等に関する洗練された発言をする者もあり、高等専門教育の「成果」の一端を知ることができる。 来年度(研究期間最終年度)には、収集した資料の分析に加えて、同時代の諸外国との比較を含めた形で考察の幅を広げ、その成果を取り纏めて公表を目指すこととする。
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