2003 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能なフェア・トレード(公正貿易)のあり方と、その日本における発展の可能性
Project/Area Number |
15653015
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊東 早苗 名古屋大学, 大学院・国際開発研究科, 助教授 (80334994)
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Keywords | フェアトレード / 貧困 / 小規模起業開発 / 世界貿易機構(WTO) / 環境 / 多国籍企業 / NGO / 南北問題 |
Research Abstract |
本年度はフェアトレードの世界的な研究動向の把握及び日本におけるフェアトレード実施団体の概要について調査した。世界的動向については、WTOの国際会合、及びそれに呼応する市民運動の流れを文献により調査した。市民運動とひとくちに言っても、その中には様々な立場のものが含まれる。本研究で最も注目しているのは、世界中にネットワークを持つNGOであるOXFAM INTERNATIONALによる"MAKE TRADE FAIR"というキャンペーンの内容と、このキャンペーンが引き起こす様々な関係機関や市民活動団体の反応である。先進国政府、及びIMFや世界銀行は、途上国の貿易の自由化を推進する立場を基本的に崩していないが、一部の多国籍企業の中には、自分たちの利益追求だけでなく、倫理的な企業活動や社会貢献を行うことに意識的な動きもある。たとえば石油会社のSHELLや、日本のSONYは、企業利益の一部を環境問題の解決や途上国の貧困削減に振り分ける努力をしている。 既存の企業が利益の一部を社会に還元するのとは別に、もともと世界における富の分配の不平等を正すために活動してきたNGOが、途上国貧困層の自立を促すための支援活動として、フェアトレードを実践する動きも活発である。OXFAM INTERNATIONALのように、活動を政策提言に限り、フェアトレードに関する知的リーダーシップをとることを優先させているNGOもある一方、実際にフェアトレードを実践しているNGOも数多くある。こうした動きは従来欧米で盛んであったが、近年は日本でも各種フェアトレード団体が育ちつつある。欧米でも日本でも、フェアトレードで扱う商品としては、コーヒー、チョコレート、ジャムといった加工食品が主であったが、日本及び英国で最近注目を集めているのは、衣料品を扱って成功しているフェアトレード・カンパニーの存在である。 フェアトレード・カンパニーは、グローバル・ヴィレッジという環境保護と途上国支援を実施するNGOが1995年に設立した貿易会社である。代表のサフィア・ミニ女史は日本在住の英国人で、2001年にはフェアトレード・カンパニーが販売する衣料品のブランド名でもある「ピープル・ツリー」を会社名として、英国にも新しい会社を設立した。本研究の一環として、日本で最も成功しているといわれるこのフェアトレード・カンパニーと連絡をとり、彼らが主催するワークショップに参加して、その活動の特徴と成功の要因を分析した。
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