2004 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能なフェア・トレード(公正貿易)のあり方と、その日本における発展の可能性
Project/Area Number |
15653015
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊東 早苗 名古屋大学, 大学院・国際開発研究科, 助教授 (80334994)
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Keywords | WTO / 認証制度 / フェアトレード / 養殖エビ / 貧困 / バングラデシュ / NGO |
Research Abstract |
今年度は3月にバングラデシュを訪問し、日本に手工芸品や有機加工食品を輸出しているNGO及び輸出業者を調査した。これと並行し、バングラデシュから日本や欧米に輸出されている有機栽培による養殖エビの生産と流通システムについても調査した。今年度はインドにおける綿花の有機栽培を調査する計画をたてていたが、訪問先との日程調整がつかず、調査地をバングラデシュのエビ養殖場に変更した。この調査に関しては、英国サセックス大学開発研究所(IDS)、バングラデシュ開発研究所(BIDS)、サウスウェスト大学(バングラデシュ)、カーティン工業大学(オーストラリア)の研究者と情報交換し、将来に向けての協同研究体制を構築しつつある。 国内おいては、「なごや自由学校秋冬連続講座」を通じ、フェアトレードに関わる有限会社やNGOの資料を昨年度に引き続き収集した。 こうした情報収集の結果浮かび上がってきたのは、認証制度の問題である。認証制度には、フェアトレードに携わる団体自体を認証する制度と、フェアトレードで扱う典型的な製品に対する認証制度(たとえばコーヒーや綿花の有機栽培認証など)がある。こうした認証制度とともに、農水産物輸出の増大を目指す途上国経済に大きな影響を持つのが、世界貿易機関(WTO)で合意された農水産物の衛生基準に関する「植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)」と、その対策としての「危害分析重要管理点(HACCP)」と呼ばれる衛星管理手法である。 今年度の研究から得られた主たる知見として、二点挙げられる。第一に、非営利団体が携わる手工芸品の販売では、途上国の貧困削減に大きな影響を及ぼすには至らない。第二に、途上国経済全体により大きな影響を及ぼすためには、途上国農村の多くの農民が生産に携わる農水産物の輸出に係わる貿易障壁を下げることである。そのためには、衛生基準や認証制度などが先進国との間で非関税障壁となるのを防ぐことが重要である。
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Research Products
(1 results)