2003 Fiscal Year Annual Research Report
バイエルンの産業革命――先進農業地域の工業化・ポスト工業化・高度福祉社会への展開
Project/Area Number |
15653020
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Research Institution | Ibaraki National College of Technology |
Principal Investigator |
箱山 健一 茨城工業高等専門学校, 人文科学科, 講師 (40290712)
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Keywords | バイエルン / 経済史 / 地域経済論 / 産業革命 |
Research Abstract |
本研究課題は、表題から自明のように、工業化論についての新しい枠組みの提示を含むものである。よって、現地アルヒーフでの資料所在調査作業と平行させて、概念モデルの吟味作業までを初年度の課題とした。資料調査については、BWA(バイエルン経済文書館)にて、夏季休業期間を利用した二週にわたる資料所在調査作業を行ない、予定した成果に達した。実績としては、まず、社会経済史学会全国大会において、バイエルンのクラウス・マッファイ社とMAN社の実証史料を使いつつ、先進農業地域型工業化モデルの提唱を行なった。このモデルの要点は以下である。(1)18世紀の植民地物産(特に綿)のヨーロッパへの流入が引き起こした衝撃力によって、旧来の生産諸関係とは一応別個の再生産構造が生み出された「先進工業地域型」の工業化に対して、近接経済空間の工業化を前提とし、近接経済空間からの原商品(特に綿商品)の移入の衝撃力が生み出した再生産構造を「先進農業地域型」の工業化とする。(2)「先進農業地域型」産業革命の起動力は、当該経済空間内部における再生産ではなくて、外部経済空間からの原商品移入であるから、当該経済空間工業化の基軸部門は、輸送交通関連工業である。(3)このタイプの工業化では、中心地点一極集中型の巨大経済空間が形成される。批判とその後の研究進展を受けて、経済空間史研究会研究集会にて、再度の研究発表を行なった。この過程で下記の所見を得た。(1)「先進工業地域型」の工業化が比較的閉鎖的な域内再生産構造をもった経済空間を生み出したのに対して、「先進農業地域型」の工業化で形成された経済空間では、空間的に完結しない開いた再生産構造をもつ(よって、これは「原経済圏」ではない)。(2)「先進農業地域型」の工業化では、農業ならびに農業関連工業の再編強化が工業化過程に平行して生じているが、「先進農業地域型」と云いつつも、この側面の分析が未着手であること。
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Research Products
(2 results)