2003 Fiscal Year Annual Research Report
福祉国家の宗教的基盤を求めて―日本とスウェーデンの共同墓をめぐるライフヒストリー
Project/Area Number |
15653035
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
大岡 頼光 中京大学, 社会学部, 講師 (80329656)
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Keywords | 老人介護 / 規範意識 / 福祉国家論 / 比較・宗教社会学 / 家の境界 / 共同墓 / 死者の追憶 / 人格崇拝 |
Research Abstract |
研究実績の図書の原問題は、なぜ日本人の多くは家族が老人を介護しなければならないと感じてきたのか、であり、これを三つに分けて論じた。 1.老人の床を囲む家族は社会や国家に何を要求できるかという公的な老人介護の根拠の問い。親は自分で介護すべきという意識をどういう論理で越えられるか。 2.かつて<家>で老人を介護したスウェーデン人が、公的な老人介護を要求できると考えるようになったのはなぜかという、スウェーデンの<家>への問い。 3.家族が老人を介護するしかないという規範や感情はどのような死生観と結びついているのか、それは変わりうるのかという、介護と死生観の問い。 第I部では、老人への介護サービスを、税金や保険料等で公的にすべきだといいうる論理を追究した。結論だけいえば、労働力を生み出せない老人介護の根拠は、すべての老人の人格自体が「聖なるもの」だという人格崇拝の論理によるしかない。 だが、論理を作り出すだけでは足りない。論理さえ作り出せば、それをわれわれがすんなり受け入れるわけではない。家の中には公的福祉が入ってきてほしくないという「家の境界」の意識が日本にはまだ残り続けている。このままでは公的な老人介護の論理を作り上げても日本に根付くことはないだろう。 公的に老人を介護するための論理はどうすれば日本に根付くことができるのか。それを考えるため、第II部以降では日本社会の土壌の特質を明らかにしようとした。 第II部では、日本と比較するため、公的な老人介護の論理が根付いてきたスウェーデン社会の土壌をまず分析した。 そのうえで、第III部では、日本の土壌にも改良すれば論理の根付けを手助けする要素があるかを考えた。人格崇拝という公的な老人介護の論理を受け入れる宗教的契機や象徴を、日本やスウェーデンに探ってみた。 最後に、縁にこだわる個別主義を踏まえながら、いかに普遍主義へ近づきうるかを考えた。
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Research Products
(1 results)