2003 Fiscal Year Annual Research Report
「三項関係感情」の実態とその発生メカニズムに関する探索的研究
Project/Area Number |
15653043
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠藤 利彦 京都大学, 教育学研究科, 助教授 (90242106)
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Keywords | 三項関係感情 / 共感的喜び / 妬み / 幸福バランス / 自由記述式質問紙調査 |
Research Abstract |
従来の感情研究の多くは、ある特定事象に遭遇した当事者が直接経験する感情を問題にしてきた。しかし、我々は、ある事象が他者にふりかかった場合でも、自らは本来、非当事者であるにも関わらず、強く感情的に反応することがある。例えば他者に宝くじが当たったのを知り喜び、時に妬み、あるいはまた他者が不幸な事象に接した時にそれに共感的苦痛を覚え、時にいい気味という感情を経験したりする。こうした感情経験はきわめて日常的なものでありながら、これまで十分に、その性質や発生機序などが理論的・実証的に検討されてきたとは言い難い。そこで本研究では、こうした感情を「事象」-「他者」-「自己」という三項関係の中で生じる複雑な感情であるという意味で「三項関係感情」と呼び、その実態と発生メカニズムを吟味することにした。本年度は特に「共感的喜び」と「妬み」に焦点を絞り、それらが日常、いかなる場面でいかなる他者に対してどのように経験されているのか、またいかなる要因がそれらの発生に関与している可能性があるかを、自由記述を中心とする質問紙調査を通して探索的に明らかにすることを目的とした。18-25歳の348名(男172、女176)からデータを収集し、同様の事象でもそれが「共感的喜び」の生起に通じたり、逆に「妬み」の生起に通じる場合があること、また例えば他者が目上で親しく、あるいはまた出来事の生起以前に回答者が他者よりも幸福な状態にある場合や、出来事が回答者に生じたとしてもあまり重要な意味を持たない場合に「共感的喜び」がより経験されやすいなど、他者との立場関係や親しさ、出来事が起こる以前の他者および自己それぞれの幸福状態やそのバランス、さらには他者に起こった出来事が自己にとって持つ意味といった、種々の状況的要因が感情の質を大きく分けることが推察された。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 遠藤 利彦: "パーソナリティ発達研究の現況と課題"児童心理学の進歩. 43. 2-32 (2003)
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[Publications] 遠藤 利彦: "子どもに育てたい社会性とは何か"児童心理. 800. 1-9 (2004)
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[Publications] 遠藤利彦: "教育心理学ハンドブック「最近の研究動向:発達」 (日本教育心理学会編)"有斐閣. 297(11) (2003)
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[Publications] 遠藤 利彦: "心理学研究法「観察法:日常のふるまいの中に心の本質を見出す」(高野陽太郎・岡隆編)"有斐閣. 250(25) (2004)
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[Publications] 遠藤 利彦: "コミュニケーション学がわかる「赤ちゃんが対話を身につけるまで」"朝日出版 AERA MOOK. 150(6) (2004)
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[Publications] 数井みゆき, 遠藤利彦(編): "アタッチメント:生涯にわたる絆"ミネルヴァ書房(印刷中). (2004)
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[Publications] 遠藤 利彦: "キーワードコレクション発達心理学「社会化・アタッチメント他」 (二宮克美, 子安増生編)"新曜社(印刷中). (2004)
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[Publications] 遠藤 利彦: "はじめての心理学「感情の本性を探る」 (繁升算男編)"エコノミクス社(印刷中). (2004)