2003 Fiscal Year Annual Research Report
グローバルな「危機社会」化に対応した国際理解教育の総体的再編のための基礎的研究
Project/Area Number |
15653069
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井上 星児 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (70223253)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
レヴィ アルヴァレス C 広島大学, 総合科学部, 助教授 (80284123)
崔 吉城 広島大学, 総合科学部, 教授 (80236794)
楠原 彰 國學院大学, 文学部, 教授 (00052150)
森田 真樹 立命館大学, 産業社会学部, 助教授 (60340486)
|
Keywords | 国際理解教育 / 東アジア / 日本と韓朝鮮関係 / 歴史清算と認識の共有 / 世界帝国と周辺の弱小国家群 / サーミール・アミン / 柄谷行人 / 歴史的地政学 |
Research Abstract |
科研第1年目の本年度は、2度の研究総会における長時間の研究合宿により、次のようなマクロ・ミクロの状況認識を共有した。すなわち、ユネスコ主導の貴重な試行錯誤と知見の蓄積を採り入れて進められてきた世界の国際理解教育は、冷戦構造による<均衡の平和>の擬制の下で大目標を見失い、1980年代後半からの世界史の激動(ソ連圏の自壊、湾岸戦争。日本ではそれにバブル経済の崩壊と<昭和>の終焉が重なる)、その後に到来した90年代の米国の一極支配と、市場・情報テクノロジー・価値観・言語(英語)のグローバリゼーション、その頂点で起こった「9.11」テロルとその報復戦争の連鎖拡大による<文明の衝突>的緊迫化という、本来なら国際理解教育が最も力を発揮しうる時代に到って、世界的に低迷したままであること、皮肉にも日本では、その時期から新しい学習指導要領による「総合学習」の一環としての国際理解教育の公的導入が図られたが、当然に現場での戸惑いや混乱が大きいこと等。これらを、井上星児論文(2003)に関する楠原彰の批判的分析とそれをめぐる討論を通じて再確認し、その認識の上に、日本の国際理解教育の「教育目標」、「カリキュラム」、生徒たちが身につけたInternational Awarenessの「評価」のあり方等を総点検した。また地域的には、第1年度は「東アジア」とりわけ韓国・朝鮮半島の政治的・文化的な「危機状況」について、今年度2度にわたり現地調査を行ってきた崔吉城の報告と分析、およびS・アミンに依拠した柄谷行人の「韓国・朝鮮」を世界帝国と周辺小国家群の歴史的地政学の布置から読み取ったテクスト(『日本精神分析』等)についての井上星児の分析をめぐる、計2日間にわたる大討論により、認識を共有した。 今回の科研総会は公開し、教員、公務員、民間企業定年退職者、音楽家ら一般市民からの参加・発言が得られたが、科研の国民還元の1つのモデルを提案しえたかと自負する。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 井上 星児: "グローバルな危機社会のもとで、国際理解教育はいかにして可能か?"日本グローバル教育学会誌「グローバル教育」. 第5号. 1-22 (2003)
-
[Publications] 井上 星児: "批評家の自己超越と(トランスクリティーク)-柄谷行人はいかにして「事前の哲学者」になったか-"国文学(学燈社). 1月号. 52-58 (2004)
-
[Publications] 崔 吉城: "哭きの文化人類学"晩声社. 172 (2003)