2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15654012
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大津 幸男 九州大学, 大学院数理学研究院, 助教授 (80233170)
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Keywords | アレクサンドロフ空間 / ラプラシアン |
Research Abstract |
コンパクトリーマン多様体,及びアレクサンドロフ空間を含むようなクラスの距離空間の性質を調べる新しい手法を導入するために,調和振動子の統計力学をこのような空間上に導入することを試みた.これまで空間にネットを固定し,そのネットの距離構造から定まる離散ラプラシアンを導入し,それらがランダムなネットについて元の空間のラプラシアンに適当な意味で収束することを示していた.そこで,空間上の関数をネット上に制限することでユークリッド空間の元と同一視し,それを一般化座標とみなすことにした.離散ラプラシアンのエネルギー形式は一般化座標の二次形式となるので,それを相互作用として一般化座標が振動しているモデルを考えた.そのため一般化座標の共役変数として一般化運動量を新たに導入し,それらを用いて空間上の全ての調和振動子ハミルトニアンを定義した.そして,そのユークリッド空間上の複素急減小関数の空間を考え,シュレーディンガー表現により我々のハミルトニアンを量子化し,このモデルの平衡力学系を構成した.つまり,離散化した密度作用素,分配関数,虚時間等の概念をネット上で定義し,それらの収束を調べた.次に,統計力学でよく使われる分配関数のユークリッド経路積分による表示,及び,温度グリーン関数の手法を我々の場合に導入することを試みた.調和振動子自体は波動方程式を用いて記述されるが,調和振動子の平衡系は実時間を虚時間に解析接続した(円周方向に拡張した)ラプラシアンで記述される,このことを我々の場合にも拡張したことが本質的である.更に,異なる空間の二つのネットを使い,分配関数及び自由エネルギーの摂動論を展開することで,距離構造の変形理論の構築を試みた.
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