2004 Fiscal Year Annual Research Report
陸生貝類の分子古生物学的研究:小笠原諸島のカタマイマイ類を例として
Project/Area Number |
15654070
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
遠藤 一佳 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 助教授 (80251411)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 聡 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助教授 (10236812)
|
Keywords | 殻体基質タンパク質 / 陸生貝類 / 分子古生物学 / 化石タンパク質 / 小笠原諸島 / Mandarina / Euhadra / dermatopontin |
Research Abstract |
今年度は、現生種における殻体基質タンパク質Dermatopontinの構造解析および機能解析を行った。基眼目の二種、ヒラマキガイとタケノコモノアラガイ、および柄眼目の六種、ヒタチマイマイ、タカチホマイマイ、ミスジマイマイ、クチベニマイマイ、ニッポンマイマイ、コガネカタマイマイの合計八種の外套膜よりDermatopontinを同定した。基眼目からは3タイプのDermatopontinが同定された。タイプ1はMarxen et al. 2003によりヒラマキガイの殻体から抽出されたものに対応し、タケノコモノアラガイにおいても外套膜でのみ強く発現していることから殻体基質タンパク質であると考えられる。柄眼目からは二タイプのDermatopontinが同定され、タイプ1が外套膜のみで強く発現していることから殻体基質タンパク質であると考えられる。さらに、同定されたDermatopontinについて系統解析を行った。その結果、複数のタイプを生みだした遺伝子重複は、基眼目と柄眼目の分岐後、各々の系列で独立に生じたことが示唆された。基眼目と柄眼目の共通祖先が持っていたのは、一般的な機能を担うDermatopontinであったことが予測されるので、この系統解析の結果は、各々の系列のDermatopontinが殻体基質タンパク質として使われるようになったのは収斂現象であることを示唆する。また、小笠原産のコガネカタマイマイと本州に生息する他の柄眼目のDermatopontinの一次構造を比較した結果、この2グループを区別できる領域を二ヶ所見つけることができた。今後は各種の配列に対して抗体を作成し,化石種を含めて免疫化学アッセイを行う予定である。
|