2003 Fiscal Year Annual Research Report
生物による選択的な炭酸カルシウム結晶形成機構の解明
Project/Area Number |
15654073
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
沼子 千弥 徳島大学, 総合科学部, 講師 (80284280)
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Keywords | 生体鉱物 / 炭酸カルシウム / 微量送液システム / その場観察 / カルサイト / アラゴナイト / ファーテライト |
Research Abstract |
炭酸カルシウムにはカルサイト、アラゴナイトのように様々な多形が存在するが、その存在比は非生物系と生物系で大きく異なっていることが、いわゆる生体鉱物におけるカルサイトーアラゴナイト問題として知られている。貝や珊瑚などの生物が鉱物種、結晶形態、穀体の中での分布の全てを制御しながら生体鉱物として炭酸カルシウム結晶を形成してゆくメカニズムには新規材料開発を考える上で模倣すべき点を多く含まれると考えられ、その解明が望まれて久しい。本研究では、二枚貝の外套膜上で人工的に合成された炭酸カルシウムがどのような影響を受け結晶成長をしてゆくかその場観察を行うために、微小送液システムとpHモニタリングシステムを連動させ、常に濃度の一定な状態でpHや温度を変化させ、炭酸カルシウムの結晶を形成するシステムを構築した。 まず本年度は、炭酸カルシウム形成の試薬の種類、濃度、pHなどが炭酸カルシウム形成にどのような影響を与えるかを調べるために、合成条件に関する基礎データの収集に着手した。その結果、通常のカルシウムイオンと炭酸ナトリウム水溶液を用いた合成実験ではカルサイトとファーテライトは確認されたがアラゴナイトが形成されないことがわかった。試薬濃度を変化させてもアラゴナイトの形成は確認できず、生物組織を使わない炭酸カルシウム合成系におけるアラゴナイト形成条件の探索を引き続き行う必要があると考える。また実際の生物の組織を形成する炭酸カルシウムについて基礎データを得るために、海水性・淡水棲の二枚貝類・腹足類・多板綱およそ10種類について殻体の粉末X線回折およびSEM観察を行い、それぞれの穀体の組織ごとに構成する鉱物種の半定量的な検討とその形態に関するデータの蓄積を行った。
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