2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15655006
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鳥居 肇 静岡大学, 教育学部, 助教授 (80242098)
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Keywords | 分子間相互作用 / 電気陰性度 / 静電相互作用 / 電気四重極子 / 四塩化炭素 / 分子振動 / 理論化学 / 分子軌道計算 |
Research Abstract |
双極子微分が大きな値をとる振動モードの振動数は,溶媒分子との静電相互作用の影響を大きく受けやすい。ここで重要になる因子は,双極子微分と溶媒に由来する電場の内積として表される。この電場は多くの場合,溶質の双極子に誘起された溶媒の反作用場として表される。しかし例えば,大きな双極子微分をもつ振動モードの代表例である,カルボニル化合物のC=O伸縮振動モードの場合,四塩化炭素などのクロロアルカンなどを溶媒としたときに,このスキームから期待されるよりかなり大きい振動数シフトが実測される。 この点について理解を深めるために,アセトンと4分子の四塩化炭素から成るクラスターを対象とした非経験的分子軌道計算を行い,四塩化炭素分子の周辺に存在する非分極的な静電場が,四塩化炭素溶液中における振動数シフトに大きく寄与していることを明らかにした。四素塩化炭素分子の場合,分子の周辺に存在する静電場はかなり大きく,なお且つC-Cl結合の延長線上で分子の内側から外側へ向かう方向となっている。これは,Cl原子上に1.5 au程度の大きさの四重極子が存在するためである。 このようにCl原子上に大きな四重極子が存在する電子構造的理由を明らかにするため,Cl原子を含む最も簡単な分子の1つであるCl_2分子について,分子周辺の静電場と分子内の電子分布を検討した。その結果,分子内のCl原子内部における電子密度は,結合の延長線上で小さく,結合に垂直な方向で大きいことが明らかとなった.これは,3p_zに由来する被占分子軌道は1つであるのに対し,3p_xおよび3p_yに由来する被占分子軌道はそれぞれ2つずつあるためである。 さらに,極性のクロロアルカンであるクロロホルムとジクロロメタンを対象として,液体構造に対する塩素原子上の四重極子の効果を検討した結果,幾つかの動径分布関数に,大きな影響が明瞭に見られることが分かった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] H.Torii: "The role of atomic quadrupoles in intermolecular electrostatic interactions of polar and nonpolar molecules"J.Chem.Phys.. 119(4). 2192-2198 (2003)
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[Publications] H.Torii: "Pressure dependence of the liquid structure and the Raman noncoincidence effect of liquid methanol revisited"Pure Appl.Chem.. 76(1). 247-254 (2004)
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[Publications] H.Torii: "Extent of delocalization of vibrational modes in liquids as a result of competition between diagonal disorder and off-diagonal coupling"J.Phys.Chem.A. 印刷中.