2003 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ粒子形成によるアルカリハライド結晶薄膜のシンチレーション機能の制御
Project/Area Number |
15656007
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中山 正昭 大阪市立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30172480)
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Keywords | アルカリハライド / 薄膜 / CsI / NaI / ナノ粒子 / シンチレーション / 発光 / 自己束縛励起子 |
Research Abstract |
薄膜結晶の母体材料として、主要なアルカリハライド・シンチレータ材料であるCsIに着目し、ヨウ素をコモンイオンとした2種類のアルカリハライド(NaI, KI)をドーピング材料として、試料作製を行った。試料作製においては、まず、ブリッジマン法によりドーピングしたバルク結晶を作製し、それをソースとして真空蒸着法を用いて薄膜の結晶成長を行った。物性評価に関しては、構造物性の観点から、X線構造解析と原子間力顕微鏡(AFM)による表面モルホロジー観察を行い、光物性の観点から、X線励起発光(シンチレーション)スペクトル、紫外線励起発光スペクトル並びに発光励起スペクトルの測定を行った。研究成果の概要を以下に述べる。 1.NaIをドーピングしたCsI(CsI : Na)薄膜では(ドーピング濃度0.1〜0.3mol%)、真空中での熱処理(250℃、1〜3時間)によりNaドーピングに起因するシンチレーションが活性化することを見出した。X線構造解析からは、熱処理の効果は全く観測されなかったが、AFM観察により、試料表面に数10nm径のナノ粒子が熱処理により生じることを確認した。シンチレーション光の発光励起スペクトルには、母体のCsIの励起子吸収とNaIの励起子吸収が観測された。このことは、熱処理によって形成されたナノ粒子はNaIであり、母体のCsIからNaIナノ粒子に励起エネルギー移動が生じていることを意味している。発光スペクトルの温度依存性から、励起エネルギー移動の要因として、母体CsIの自己束縛励起子がホッピング運動によりNaIナノ粒子に捕捉されることが示された。 2.KIをドーピングしたCsI (CsI : K)薄膜では(ドーピング濃度0,1〜0.3mol%)、熱処理を行ってもドーピングに起因するシンチレーションは生じず、AFMによる表面観察によってもナノ粒子形成は全く観測されなかった。この結果は、ナノ粒子形成とシンチレーション機能の活性化が密接な関係にあることを示している。
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[Publications] 中山正昭: "CsI : Na薄膜におけるナノ粒子形成とシンチレーション機能"固体物理. Vol.38,No.12. 865-869 (2003)
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[Publications] M.Nakayama: "Scintillation activated by nanoparticle formation in CsI : Na thin films"Journal of Luminescence. (to be published). (2004)