Research Abstract |
本研究は,車両走行により生ずる橋梁振動がもたらす騒音や低周波音の環境振動問題を,システムの振動伝達問題として捉え,それぞれに伝達関数で表した理論的モデルの適用によって定量的に予測する手法を確立することを目的とした.平成17年度の研究実績は以下のとおりである. 1)車両が道路橋エキスパンション・ジョイント部を通過する際に発生する低周波ジョイント音に着目し,4主桁合成桁橋において振動および橋梁周辺での低周波音を現地にて計測して,主桁ウエブの振動に起因する30Hz程度の騒音がジョイント通過時に増幅されることなど,実道路橋での低周波音の特性を把握した.これを基に,走行車両-橋梁部位振動-空気振動システムの解析モデル・伝達関数について検討した. 2)複合低周波音から人間への伝達過程を解明するために,低周波領域の閾下音(25Hz,-3dB,-5dB,-6dB,-10dB)が超低周波純音(12.5Hz,16Hz,20Hz)および低周波純音(31.5Hz,40Hz,50Hz)の知覚閾値に及ぼす影響に着目し,音響心理実験を行った.その結果,閾値から音圧レベル-5dB以内の閾下音の存在によって,近接する低周波純音の知覚閾値が1〜6dB程度低下することが明らかとなった.同時に,この問題にラウドネスモデルを適用し,ラウドネスモデルにより低周波領域での伝達過程をある程度,表し得ることを示した. 3)車両走行と橋梁振動の関係,橋梁振動と低周波音の関係,低周波音伝播への地形の影響,複合低周波音が及ぼす人間への物理的・心理的影響,低周波音・騒音問題への統計エネルギー解析の適用性など,3年間で行った研究の成果を整理し,道路橋低周波音の環境影響予測法に関する基本データを得た.ただし,環境影響予測手法の提案にまでは至っていない.
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