2003 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属イオンを含有したアモルファス酸化物薄膜における磁性ナノクラスターの光制御
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15656158
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平尾 一之 京都大学, 工学研究科, 教授 (90127126)
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Keywords | 磁性ナノクラスター / フェライト / 薄膜 / スピングラス磁性 / 磁気光学効果 |
Research Abstract |
酸化物磁性体は、記録メディアやモータなど極めて広範囲の応用に用いられているだけでなく、基礎的見地からも強磁性、フェリ磁性、反強磁性、スピングラス等の多彩な興味深い物性を示す。その中でもクラスタースピングラスは、隣り合うスピンを平行に揃えようとする強磁性相互作用と反平行に揃えようとする反強磁性相互作用が混在した状態、すなわち、「フラストレーション」と「ランダムネス」とが競合した際に生じる興味深いスピン状態である。 平成15年度は、外場(光、磁場)を印加して新規な光磁気機能を引き出すため、室温でクラスターグラス転移を示す材料を開発した。具体的には、スパッタ法による非平衡条件下での気相合成プロセスを用いて亜鉛フェライト酸化物(ZnFe_2O_4)薄膜を作製した。X線回折測定から、作製された亜鉛フェライト薄膜の結晶構造はスピネル構造であり、平均粒径が約10nmのナノ結晶集合体であることがわかった。安定相の亜鉛フェライトはネール温度が10Kの反強磁性体であり、室温での磁化は低いことが知られているが、作製した薄膜は室温で高い磁化を示しフェリ磁性的な挙動を示した。Zn-K端におけるX線微細吸収構造(EXAFS)の解析から、作製した亜鉛フェライトは準安定相であり、本来スピネル構造の四面体位置を占有しているZn^<2+>が六面体位置を占有していることが明らかになった。超伝導量子干渉計(SQUID)測定から、この薄膜は室温付近(〜325K)でクラスターグラス転移を示し、光や磁場などの外場印加による新規な光磁気機能の発現が期待される。平成16年度は、クラスターグラス磁性の光制御の研究を遂行する予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] K.Tanaka, S.Nakashima, K.Fujita, K.Hirao: "High Magnetization and The Faraday Effect for Ferromagnetic Zinc Ferrite Thin Film"Journal of Physics : Condensed Matter. 15. L469-L474 (2003)
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[Publications] S.Thongchant, Y.Hasegawa, K.Tanaka, K.Fujita, K.Hirao, Y.Wada, S.Yanagida: "First Observation of Faraday Effect of EuS Nanocrystals in Polymer Thin Film"Japanese Journal of Applied Physics. 42(7B). L876-L878 (2003)
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[Publications] S.Nakashima, K.Fujita, K.Tanaka, K.Hirao: "Effect of Heat Treatment on the Magnetic Properties of Zinc Ferrite Thin Film Prepared by a Sputtering Method"Journal of the Ceramic Society of Japan. (印刷中). (2004)
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[Publications] M.Nishi, S.Tanabe, M.Inoue, M.Takahashi, K.Fujita, K.Hirao: "Fluorescence Properties of Er^<3+>-doped Nanocrystals Synthesized by Glycothermal Method"Journal of the Ceramic Society of Japan. (印刷中).