Research Abstract |
本研究で提案する自己破砕性スマートコンクリートは,コンクリート中に再生PET樹脂の小片を骨材の一部として混入した上,外部からの加熱によって生じる熱応力を駆動力としてコンクリート中にき裂を発生・成長させることを狙ったものである.本研究事業では,最初に,平面ひずみ状態を模擬した二次元試験体を作製し,定常加熱試験と二次元有限要素解析によって,混入するPET樹脂ブロックの形状や密度がコンクリートの破砕性に及ぼす影響について検討を行った.その結果,10mm角程度のPET樹脂ブロックを体積比で5%程度コンクリートに混入することによって,強度や施工性を著しく損なうことなく80K程度の昇温で破砕が可能であることが明らかになった.また,この際,混入するPET樹脂ブロックの体積弾性率が破砕性能に大きく影響することが明らかになった。この検討結果をもとにして,次に,10mm角のコンクリートブロックを混入した三次元試験体を作製し,定常加熱試験と三次元有限要素解析によって,PET樹脂の混入量が破砕性能と圧縮強度に及ぼす影響について検討を行った.その結果,二次元の場合と同様に,5%程度の混入量と80K程度の昇温で破砕が可能であることが明らかになった.以上によって,材料開発の面で,提案した再生PET樹脂混入による自己破砕性コンクリートの実現可能性が証明された.さらに,実用化を目指して,コンクリートの加熱方法についても検討を行った.最初に,2.45GHzのマイクロ波の照射による遠隔加熱を試みた.その結果,1000W程度のマグネトロンを用いた場合においても,コンクリート表面は短時間で破砕可能温度まで昇温されることが明らかになった.しかしながら,コンクリート内部の加熱には相当の時間を要し,大規模なコンクリート塊の効率的な破砕にはさらなる検討が必要であることが示唆された.次に,コンクリートの補強筋に直接交流電流を流すことによってジュール加熱することを試みた.その結果,マイクロ波照射に比べて効率的にコンクリートを昇温することが可能であることが明らかになった.今後は,実用化に向けて,追加検討を進める予定である.
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