2004 Fiscal Year Annual Research Report
フラーレン・金属錯体積層構造を用いた機能調和型高効率光電変換機能材料の構築
Project/Area Number |
15656242
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
尾上 順 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 助教授 (50241245)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飛田 聡 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 助手 (30361778)
中尾 愛子 理化学研究所, ビームアプリケーションチーム, サブリーダー (60342820)
星野 幹雄 理化学研究所, ナノ物質工学研究室, 共同研究員 (90101047)
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Keywords | フラーレン / 亜鉛ポルフィリン / 交互積層 / 光電子分光 / 電荷移動 / 密度汎関数 |
Research Abstract |
太陽光を効率良く吸収する金属ポルフィリン錯体と電子親和力が大きいフラーレンを交互に組み合わせた積層構造を創製し、その構造と電子構造を評価し、光電変換機能の評価を行ない、高い量子効率を有する機能調和型光電変換素子への展開を目的とする。 まず、フラーレンと金属ポルフィリン錯体との相互作用を調べることが重要であり、そのために、交互積層構造の電子構造をIn situ光電子分光を用いて調べた。既存の光電子分光装置に付設した超高真空蒸着チャンバーに、所長リーダーシップで製作した金属錯体導入セルおよび既存のフラーレン導入セルを真空蒸着チャンバーに取り付け、水晶振動子を用いて蒸発温度と蒸着速度の基礎データを取得した。 水晶振動子により蒸着レートをモニターしながら、グラファイト基板上にフラーレン層(10nm)を作製し、その上に金属ポルフィリン錯体Zn(oep)層(10nm)をデポして光電子分光を測定した。その結果、亜鉛のピークが高エネルギー側にシフトし、フラーレンの炭素ピークが低エネルギー側にシフトしていたことから、金属ポルフィリンからフラーレンに電荷移動が起こっていることがわかった。通常、フラーレンは高い電子受容能力を有し、ポルフィリンからフラーレンに電荷移動が起こることが知られている。フラーレンからポルフィリンへ電荷移動が起こるのは今回が初めての観測例と考えられるが、メカニズムについては第一原理計算による理論解析を行っている最中である。 さらに、この積層膜の上にフラーレン層をデポすると、水晶振動子の測定から下地のZn(oep)層が見えなくなる程度にフラーレン層をデポしているにもかかわらず、Zn(oep)層のピークの強度がほとんど変化せずに観測した。参照として、フラーレンとZn(oep)が1:1の混晶の単結晶の光電子スペクトルを測定して比較した結果、まったく同じスペクトル形状をしていることがわかった。このことより、下地がZn(oep)層の場合、フラーレン分子をデポすると、Zn(oep)層に入り込んでいき最終的には1:1の混晶構造を形成するという化学的には非常に面白い現象を発見した。
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Research Products
(3 results)