2003 Fiscal Year Annual Research Report
太陽光による水の光分解を可能にする共役系ネットワークポリマーシステムの構築
Project/Area Number |
15656244
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
青田 浩幸 関西大学, 工学部, 助教授 (50247897)
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Keywords | 共役系ポリマー / 水溶性ポリマー / 狭バンドギャップポリマー / 太陽光 / 色素増感太陽電池 / 近赤外光 / エネルギー変換 |
Research Abstract |
太陽光による水の分解を行うためには分子レベルの局所部位に多光子エネルギーを用いて4電子酸化還元反応を実現することが条件となる。太陽光は希薄である上にそのエネルギーは290nmの紫外光から2400nmの赤外光まで非常に幅広く分布しており、この中で、紫外・可視光が約50%、残り50%が赤外光となる。すなわち光子エネルギーを効率よく利用するためには近赤外光領域の光をもターゲットとする必要がある。研究代表者が既に合成に成功していた水溶性で高度に共役系の発達した高分子である狭バンドギャップポリマーはこの太陽光の幅広いエネルギー全域を吸収可能であったが、その吸収したエネルギーを、化学エネルギーや電気エネルギーへ変換することは以下の点で常識的に困難であると判断されうるものであった。すなわち、分子が光エネルギーを吸収し励起状態にあがった場合、非常に速い振動緩和により分子の最低励起状態に達し、この電位から通常光誘起電子移動やエネルギー移動は起こると考えるのが一般的である。この考え方からすると狭バンドギャップポリマーは光の吸収領域が広いが、その最低励起状態の電位は低いため、吸収した光エネルギーを熱エネルギーに変換できても、化学エネルギーや電気エネルギーへ変換するのには不向きである。逆に考えると、光エネルギー吸収直後のポリマーが最低励起状態へ緩和する前に他の物質へ電子を送り込むことが可能になれば、幅広い太陽光の有効利用へつながることになる。今回、この点を明らかにするために色素増感太陽電池をモデルとして、その色素部位に狭バンドギャップポリマーを用いることで、上述の光励起直後の狭バンドギャップポリマーから二酸化チタンへの電子移動反応とそれに付随する発電について検討したところ、発電効率は悪いものの、1100nmより短波長の光エネルギーを用いて、発電可能であることが確認できた。
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