2004 Fiscal Year Annual Research Report
ハイマツ・キタゴヨウ交雑帯のデモグラフィック・ジェネティックス
Project/Area Number |
15657021
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
綿野 泰行 千葉大学, 理学部, 教授 (70192820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝川 毅守 千葉大学, 理学部, 助手 (50213682)
陶山 佳久 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (60282315)
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Keywords | Pinus / introgressive hybridization / phenology / pollen flow / demographic genetics / reproductive isolation / molecular marker |
Research Abstract |
ハイマツとキタゴヨウの交雑帯では、父性遺伝の葉緑体DNAはキタゴヨウからハイマツへ、そして母性遺伝のミトコンドリアDNAはハイマツからキタゴヨウへと、方向性を持った遺伝子浸透が起こっている。本研究では、両種が混生し、今まさに交雑が進行中と推定されるアポイ岳をフィールドとした。自然下での交雑の実体を、様々な方法で解析し、両者の間にどのような生殖的隔離が存在するのかを明らかにすることで、遺伝子浸透のパターンが形成されるメカニズムを解き明かす事を目的としている。 1)フェノロジー:同標高では、ハイマツの方が1〜2週間程度、花期が早いが、高標高のハイマツと低標高のキタゴヨウの間で花期が重なることが分かった。 2)空気中の花粉プールの解析:スライドグラスにトラップした花粉を1個づつ単離し、PCRによって遺伝子を解析することに成功した。その結果、高標高のハイマツの花期に、実際に空気中に低標高から飛来したと考えられるキタゴヨウの花粉が混じっている事を確認した。 3)親と種子の遺伝子型解析:8種類の種特異的核遺伝子マーカーを用いて分子交雑指数を計算し、親の遺伝子型と、受粉した花粉の遺伝子型の関係を調べた。その結果、純粋なキタゴヨウと純粋なハイマツ間での交雑はほとんど起こっていないこと、雑種は花粉の選択性を失い、両親種および雑種の花粉を受粉していることが判明した。 以上の結果から、ハイマツ・キタゴヨウ間の花期による隔離は不十分であるが、強い花粉の選択的受粉(受精)による生殖的隔離が存在することが明確となった。遺伝子浸透は、既存の雑種が両新種と戻し交雑を行うことで進行すると想定される。 今後、人工交配実験によって、F1雑種形成の機構を解析する予定である。
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