2004 Fiscal Year Annual Research Report
花粉化石のDNA分析による森林植生変遷史の遺伝学的解析
Project/Area Number |
15658047
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
陶山 佳久 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (60282315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清和 研二 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (40261474)
吉丸 博志 独立行政法人森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 室長 (20353914)
高原 光 京都府立大学, 大学院・農学研究科, 教授 (30216775)
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Keywords | 花粉分析 / 古代DNA / ヨーロッパアカマツ / 国際研究者交流 / スウェーデン |
Research Abstract |
スウェーデン中部の湖から得られた湖底堆積物を材料として、異なる2時代(約100年前と10000年前)の堆積層からマツ属花粉を収集し、これらの花粉化石を試料としてDNA分析を行った。この分析によって、異なる時代に成立したヨーロッパアカマツ集団を対象とした遺伝的組成の比較が可能になる。つまり、過去の森林について遺伝的多様性や遺伝的構造に関する情報を解析し、森林植生変遷史に遺伝学的な情報を盛り込むことができる。 葉緑体DNA上のマイクロサテライト領域を含む約220塩基の領域を対象として、約100年前の試料500粒についてDNAの増幅を試みたところ、そのうち7粒から塩基配列データが得られた。また、約1万年前の試料301粒のうち4粒から得られ、合計11粒の花粉化石から塩基配列データが得られた。同様に約105塩基の領域について増幅を試みたところ、約100年前の試料234粒のうち4粒から、約1万年前の試料408粒のうち5粒から、合計9粒の花粉化石から塩基配列データが得られた。また、湖底堆積物を得た湖の周囲に現在生育しているヨーロッパアカマツ30個体を材料として、220塩基の領域についてのハプロタイプを調べた。 得られた配列は多型性に富んでおり、約220塩基の領域については16種類、約105塩基の領域については7種類のハプロタイプが検出された。現生のサンプルを合わせて解析した約220塩基の領域については、現生・100年前・1万年前で共通のハプロタイプが検出されたことから、後氷期を通じて調査対象地である湖の周辺で同じ系統が生き延びたことを示唆するものと考えられる。 本研究により、花粉化石のDNA分析が可能であることが示されただけでなく、植物集団の時・空間的な動態について、遺伝的データが直接得られることが示されたと言える。
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