2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15658062
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 宏喜 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (80086727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 茂 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00224014)
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Keywords | L-乳酸 / D-乳酸 / L-乳酸デヒドロゲナーゼ / D-乳酸デヒドロゲナーゼ / 解糖経路 / 嫌気的代謝 / 軟体動物 |
Research Abstract |
脊椎動物における嫌気的解糖の最終産物はL-乳酸であるが、D-乳酸は乳酸菌などの微生物以外に無脊椎動物にも見いだされ、マダコではL-乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)よりもD-LDH活性が高いことが知られている。本研究においては軟体動物におけるD-LDHおよびD-乳酸の生理機能の解明を目的として検討を行った。 まず、HPLCによるD-,L-乳酸の分離定量法を構築し、またD-,L-LDH活性の測定法およびD-乳酸生成の別経路の酵素グリオキシラーゼ(GLO)-Iおよび-IIの活性測定法を確立した。次に,軟体動物におけるD-,L-LDH活性の分布を調べた。その結果、これまで頭足類でのみ知られていたD-LDHが腹足類および二枚貝にもかなり広く存在することが確認された。特に、アワビ、トコブシでは頭足類と比べてもはるかに高いD-LDH活性のみが検出された。また、これまでLDHが欠損していると考えられていたアサリ、ハマグリには高いL-LDH活性と弱いD-LDH活性の両方が存在することが明らかになった。一方、GLO-I活性は測定したすべての軟体動物に検出され、ハマグリでは頭足類の10倍以上の活性が認められた。 トコブシ筋肉からD-LDHを単離した。分子質量はSDS-PAGEでは100-150kDa、ゲル濾過では240-280kDaで,2ないし3量体と予想された。これは4量体とされている細菌類のD-LDHとは異なっており、脊椎動物のL-LDHとも異なり、新規のファミリーに属するタンパク質であることが示唆された。最適pHはピルビン酸からD-乳酸方向で8.5付近および逆方向で9〜10で、ピルビン酸により強く基質阻害を受けることが確認された。 一方,D-LDH活性は環形動物のアオゴカイ体壁にも認められ、D-LDHは無脊椎動物に広く分布する可能性があることがわかった。
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