2003 Fiscal Year Annual Research Report
雌ウシの潜在能力を利用したホルモン処置を使わないダブル排卵モデルの確立
Project/Area Number |
15658079
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
宮本 明夫 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (10192767)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 昌之 帯広畜産大学, 畜産学部, 講師 (80250538)
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Keywords | 卵胞選抜 / 血流 / カラードップラー超音波画像診断装置 / 排卵 / 細胞閉鎖 / 血管新生 / ダブル排卵 / ウシ |
Research Abstract |
初年度は、ウシ卵巣内で起きている発情周期中の卵胞選抜の状況を探り、以下に挙げる成果を得た。 1)卵胞期の排卵に至る主席卵胞と、排卵せずに閉鎖する次席卵胞の基底部の血流像を、カラードップラー超音波画像診断装置によって、経時的に詳細に観察したところ、血中エストロジェン濃度の上昇につれて主席卵胞基底部でのみ局所的な血流が増加し始め、LHサージとともに急上昇し、排卵直前には最高値を示した。一方、排卵しない次席卵胞基底部では、血流が監察されなかったことから、卵胞基底部の血流は排卵現象と直接的な関係がある事を初めて生体レベルでビジュアルな画像として示した(論文1)。 2)同様に、発情周期中の第1卵胞波の直径3mm以上のすべての卵胞基底部の血流像を観察した結果、発情周期の3日目に起きる卵胞選抜と同調して、主席卵胞の血流は増加してゆくのに対して、次席卵胞とその他の小型の卵胞基底部の血流は、3日目を境として減少に転じ、閉鎖(死)に向かうことが生体レベルで初めてビジュアルに示された(投稿準備中)。 3)ウシ卵胞のステージと顆粒層細胞のグルココルチコイドシステムに関わるmRNAを調べた結果、不活性なコルチゾンを活性型のコルチゾールに変換する酵素の11beta-HSD1だけが検出され、逆の反応を促進する酵素の11beta-HSD2は検出されなかった。一方、黄体組織中には、両方の酵素のmRNAが検出された。このことから、卵胞内には、局所的なグルココルチコイドシステムが存在することが示唆された(論文2)。 4)ウシ卵胞膜内の血管新生の調節に関わると考えられるアンギオポエチンとそのレセプターTie2の発現を卵胞の状態と合わせて調べた結果、ウシ卵胞内のアンギオポエチン-Tie2システムは、卵胞の成長と閉鎖に密接に関係することがわかった。特に、アンギオポエチン2主導で、血管が不安定状態となり、血管新生因子であるVEGF等が欠如することで、その卵胞は血管系が崩壊へ向かい、結局卵胞の死(閉鎖)に陥ることが強く示唆された(論文3)。 5)ウシの発情周期のLHサージ直前に排卵する運命にある主席卵胞を吸引して除いてしまうと、その後1週間黄体が存在しない期間となり、必ず2つの卵胞が主席卵胞として成長することが初めて示された。これは、ウシのダブル排卵モデルとして今後様々な研究モデルに応用可能な基礎的なモデルとして位置づけられ、現在、その内分泌環境と局所環境について詳細に解析を進めている(2004年度アメリカ生殖学会発表予定)。
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[Publications] Acosta TJ, Hayashi KG, Ohtani M, Schams D, Miyamoto A.: "Local changes in blood flow within the preovulatory follicle wall and early corpus luteum in the cows"Reproduction. 125(5). 759-767 (2003)
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[Publications] Tetsuka M, Yamamoto S, Hayashida N, Hayashi KG, Hayashi M, Acosta TJ, Miyamoto A.: "Expression of 11β-hydroxysteroid dehydrogenases in bovine follicle and corpus luteum"Journal of Endocrinology. 177(3). 445-452 (2003)
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[Publications] Hayashi K, Acosta TJ, Tetsuka M, Berisha B, Matsui M, Schams D, Ohtani M, Miyamoto A.: "Involvement of angiopoietin-Tie system in bovine follicular development and atresia : mRNA expression in theca interna and effect on steroid secretion"Biology of Reproduction. 69(6). 2078-2084 (2003)