2003 Fiscal Year Annual Research Report
低温菌体外物質産生型糸状菌の非結晶性セルロース生産挙動
Project/Area Number |
15658104
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
近藤 哲男 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教授 (30202071)
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Keywords | セルロース / 非結晶性 / 低温菌体外物質産生型糸状菌 / Microdochium nivale / 分岐多糖 / β-1,3グルカン |
Research Abstract |
紅色雪腐病菌の一種Microdochium nivaleが低温下で菌体外にセルロースを分泌することが報告された。さらに、後の我々の実験により、このセルロースが非結晶性であることが示唆された。生物由来の非結晶性セルロースは今まで報告がなく、極めて新規なセルロース原料となる可能性を秘めている。同時に、M.nivaleの生産する非結晶性セルロースは菌体外分泌性であるので、精製が極めて容易であり、コスト削減や環境負荷の軽減に合致した新しいエコマテリアルとなることが期待される。そこで本研究ではまず、M.nivaleにおける非結晶性セルロース生産の最適条件の検討を、培養温度と振盪培養速度について行った。次に、材料としての応用利用を目指し、この非結晶性セルロースの構造解析、ならびにM.nivaleのセルロースが非結晶性で存在し得る要因などの基礎データを蓄積することを目的とした 菌体の培養最適温度である20℃で、特定の振盪培養速度条件120rpmで最大の多糖生産量を得た。つまり、培養温度条件の他に、振盪培養速度条件も生産に大きく影響を与えるという結果が得られた。そこで、その後の分析にはこの多糖生産最適条件である20℃、120rpmで培養したM.nivaleの分泌物を用いた。また、分泌物には多糖の他にわずかの酸性糖と、相当量のタンパク質が含まれていることが明らかになった。中性糖分析により、分泌多糖の構成単糖はグルコースであることが確認され、そのC1原子はβ配置をとることがFT-IRで示された。糖鎖結合分析の結果、グルコースは1-3結合を主鎖とし、1-6結合などの分岐を持つ可能性が示唆された。このことは、M.nivaleが生産する分泌多糖は、分岐を持つβ-(1-3)グルカン鎖から成り、β-(1-4)グルカン鎖であるセルロースとは異なるものであることを示している。すなわち、M.nivaleは常温の培養条件ではβ-(1-3)グルカン主鎖の多糖を生産するが、4℃での培養ではβ-(1-4)グルカン鎖であるセルロースを分泌する可能性を示唆し、培養温度条件で分泌物の構造が変化するという極めて興味深い結果が得られた。
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