2004 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子構成が異なる光入力系と体内時計中枢の再編成による光同調システムの解明
Project/Area Number |
15659057
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
藤村 幸一 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (10173460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 一之 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (30226154)
守屋 孝洋 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (80298207)
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Keywords | 視交叉上核 / 光同調 / スパイク発火 / マウス / クリプトクローム / 視神経 |
Research Abstract |
網膜-視交叉上核系を介した、明暗交代環境への哺乳類の概日リズムの同調機構を解析するため、時計遺伝子の一つであるクリプトクローム1,2をノックアウトしたマウスと正常マウスの網膜への光照射に対する視交叉上核ニューロンと網膜視神経の活動を記録し、その反応および視交叉上核ニューロンの分布を明期と暗期で比較した。まず、12時間/12時間の明暗環境で飼育したC57/BL6マウスを暗期あるいは明期に麻酔し、脳定位固定装置に補定し、明期開始後4時間から8時間(ZT4-8)および暗期開始後2時間から4時間(ZT14-16)の視交叉上核ニューロンおよび視交叉線維群の細胞外スパイク記録を行った。明期記録群は直前の暗期から引き続き実験開始まで暗室において網膜の明順応をさけた。光照射はマウスの光同調行動の最適光波長である500nm(青緑色)の超高輝度発光ダイオードを使い、入力電流によって光強度を10^9photons/cm^2/secから10^<16>photons/cm^2/secまで制御した。マウスの網膜に20秒から60秒の光照射を行い、その前後を含んだスパイク発火頻度の変化を記録した。その結果、光に対して発火頻度を上昇させる視交叉上核ニューロンは、暗期には平均して10^<11>photons/cm^2/sec付近に閾値があり、10^<15>photons/cm^2/secで最大応答に達する光強度応答曲線を描いた。一方、視神経は10^9photons/cm^2/sec以下に閾値があり、10^<13>photons/cm^2/secで最大応答に達する応答曲線を描き、視交叉上核ニューロンと視神経、それぞれの半値応答で比較すると、30〜50倍の感度の開きが認められた。視交叉上核ニューロンの最大応答刺激にあたる10^<15>photons/cm^2/sec以下の強度で光刺激した場合、暗期には視交叉上核でスパイク記録されたニューロンの70%で光に対する発火頻度の上昇が認められ、20%で抑制性の応答が観察され、視交叉上核ニューロンの大半が光応答性を示した。一方、明期に光応答を示したニューロンはわずか8%で、ほとんどのニューロンは光照射に対して無反応だった。この明期・暗期の応答分布の変化はこれまで報告されているラットとほぼ同じ傾向を示した。視神経応答は、暗期には半分が興奮性、残り半分弱が抑制性を示した。明期には7割弱が興奮性、2割強が抑制性を示したが、その明暗期における比率の違いには統計的有意差はなかった。同様の実験手順にてクリプトクロームノックアウトマウスで記録を行ったところ、視交叉上核ニューロンの興奮性の光応答には光強度応答曲線で10倍近い感度の差が認められた。視神経の応答特性には正常マウスとほとんど差が認められなかった。これらのことより、視交叉上核ニューロンの応答を含む光同調機構にはクリプトクロームが何らかの形で関わっているが、通常の視覚情報を伝える視神経応答は視交叉上核ニューロンの光応答には比較的関与が薄い可能性が示唆される。
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Research Products
(1 results)