Research Abstract |
これまでに,モルモット腹腔より採取した好酸球を用いた実験により,β2受容体の脱感作を生じた好酸球において,テオフィリン及びロリプラムなどのボスポジエステラーゼ(PDE)4阻害薬に対する感受性が約100倍亢進していることを明らかにするとともに,好酸球のPDE4阻害薬に対する感受性の増大には,チロシンキナーゼの活性化が関与している可能性を,チロシンキナーゼ阻害薬を用いた実験から明らかにしていた.そこで,本年度は,特にSrcチロシンキナーゼ活性化とそれによって生じるリン酸化経路をより直接的に明らかにすることを目的として,Srcチロシンキナーゼ阻害薬を用いた実験を行った.その結果,β2受容体を脱感作させたモルモット好酸球においては,テオフィリンやロリプラムに対する感受性が正常好酸球に比較して約100倍程度上昇していたものが,Srcチロシンキナーゼ阻害薬であるPP2の濃度に依存して,感受性増加が回復した。これは,β2受容体が刺激されるとGタンパク質共役型受容体キナーゼ(GRK)2の活性化を介したSrcチロシンキナーゼの活性化が生じ,その結果PDE4がリン酸化され,薬物感受性が増大するものと考えられた.この仮説を更に詳細に検討するために,モルモット好酸球細胞質タンパク質のチロシンリン酸化を,抗リン酸化チロシン抗体を用いたウエスタンブロッティング法によって検出することを試みた.しかし,現在のところ,モルモット好酸球PDE4を効率よく検出する抗体を得ることができておらず,確定的な証拠を得るには至っていないのが実情である.一方,好酸球が重要な役割を演じているアレルギー疾患のモデル動物をして,β2受容体脱感作に伴うPDE4阻害薬の作用増強の可能性を検討する試みも行っているところである.
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