Research Abstract |
従来より我々を含め複数の施設より肝細胞癌(肝癌)の転移に関する分子生物学的検討がなされ、染色体異常やそれらの蓄積が肝癌切除後の転移再発と関連するとの報告がみられる。近年、肝癌に対する肝移植療法が普及しつつあり、その治療成績向上のため、肝移植で得られたレシビエント肝での肝癌部、周辺非癌部の組織を採取し、全染色体に対して遺伝子増幅や欠失について包括的に解析し、肝移植後の再発との関連を明らかにし、移植後の再発予測システムを構築することとした。今年度は、これまで肝切除、剖検で得られた組織から得られたDMについて我々が開発した半定量マイクロサテライト解析を全染色体について行った。さらに癌部における各染色体における高頻度、重複、欠失の共通領域(shortest regeon of overlap)を求め、既知の癌遺伝子、癌抑制遺伝子との染色体上の位置関係と対比した。高頻度に重複が認められたのは、1q,8q,17qでその領域・頻度・既知遺伝子数はそれぞれD1S196-D1S238,1q24-q25,41/56,73%,6.5Mbp,23遺伝子(ABL2/ARG等),D8S1784-D8S514,8q22.3-q24.13,30/56,54%,16.3Mbp,28遺伝子(CML66,NOV等),17q25.3-qter,17/56,30%,2.6Mbp,41遺伝子(ASPSCRI等)。'一方、欠失に関しては、1p,4q,8p,13q,16q,17pでそれぞれ、D1S214-D1S450,1p36-22,21/56,38%,3.5Mbp,14遺伝子(DNB5等),D4S414,4q22.1,22/56,39%,6.3Mbp,22遺伝子(DRLM等),D8S550-D8S549,8p22-8p23.1,32/56,57%,5.2Mbp,9遺伝子(DLC1,N33等),D13S153,13q14.1,17/56,30%,5.2Mbp,26遺伝子(RB1,DLEU1/2等),D16S3091-qter,16q23.1-qter,19-56,34%,7.4Mbp,45遺伝子(CBFA2T3,CDH13等),D17S938-D17S1852,17p13.1-17p13.2、29/56,52%,3.4Mbp,59遺伝子(TP53等)であり、これらの既知、あるいは未知の遺伝子が肝発癌、進展、転移に深く関わっているものと考えられた。現在インフォームドコンセント作成、倫理委員会承認待ちの状態で、今後これらをふまえて肝移植例での検討をすすめる予定である。
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