2004 Fiscal Year Annual Research Report
p73/ΔNp73を介した慢性関節リウマチ滑膜細胞増殖の制御
Project/Area Number |
15659359
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
田中 康春 奈良県立医科大学, 医学部, 助教授 (20124878)
|
Keywords | p73 / ΔNp73 / HSF1 / NFκB / 炎症 / Hsp70 / 滑膜 |
Research Abstract |
慢性関節リウマチ(RA)の主要な病態として、本来増殖が制御されるべき滑膜線維芽細胞が過剰に増殖を起こしていることが挙げられる。その逸脱した増殖機構には炎症性サイトカインやプロスタグランジンが関与すると考えられているが、詳細な増殖機構は不明であった。筆者は、研究発表欄の論文に記載したように、滑膜線維芽細胞に転写調節ドメインを欠落したp73α(ΔNp73α)を発現させると、活性化HSF1(heat shock factor1)が増加し、結果Hsp70(heat shock protein70)の発現を亢進することを見いだした。この発見は、RA患者滑液中に本来存在しないHsp70が検出される事実、さらにHsp70はマクロファージに作用して炎症性サイトカインの分泌を誘導する事実と結びつくことで、RA発症の重要な引き金となると推測される。 RA患者滑膜組織では、p53の機能変異が起こっているケースが多いことが報告されている。筆者は、p53欠損細胞を用いた実験で、ΔNp73αが転写調節因子NFκBの活性化を起こすことを最近明らがにし、現在論文作成中である。NFκBは、滑膜線維芽細胞の増殖を起こす炎症性サイトカイン(TNFαやIL1β)やプロスタグランジンの合成酵素(COX2)の転写調節因子である。従って、ΔNp73αは、Hsp70発現亢進とNFκBの活性化を介して滑膜線維芽細胞の異常増殖の引き金となっている可能性が高い。興味あることには、転写調節ドメインを有するp73やp53は、このΔNp73αの作用を抑制するのみならず、炎症性ストレスに応答したNFκBの活性化も抑制した(2004年日本分子生物学会総会にて発表)。との事実は、RAの発症に、ΔNp73α/p73・p53の存在比が重要である可能性を示唆している。現在、さらにRA患者滑膜線維芽細胞で、ΔNp73αの発現が増加しているのかを検討中である。
|
Research Products
(3 results)