2003 Fiscal Year Annual Research Report
吸入麻酔薬の作用機序-超短パルスレーザーを用いた神経細胞膜の動的変化による解析
Project/Area Number |
15659364
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
森本 裕二 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (00250457)
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Keywords | 吸入麻酔薬 / 全身麻酔の機序 / セボフルラン / 超短パルスレーザー / 細胞膜 / 赤血球膜脂質 / 膜脂質流動性 |
Research Abstract |
全身麻酔薬、特に吸入麻酔薬の作用機序は、電気生理、薬理学的、分子生物学的、物理化学的手法など、これまで色々な角度から検討されてきたにもかかわらず、未だ確定していない。超短パルスレーザーによる細胞膜の動的構造変化の解析は物理化学的手法の中でも高感度で、かつ生理学的条件に近い環境で測定できる方法であるが、これを用いて吸入麻酔薬の作用機序を検討した報告は内外に見あたらない。今回、この方法を用い、吸入麻酔薬の生体膜脂質に対する影響を検討した。 [方法]生体膜としてヒト赤血球膜脂質を採用し,Dodgeらの手法で作成した。吸入麻酔薬溶解液は臨床で使用されている閉鎖式回路を模倣し,持続的にセル内のBuffer液をバブリングすることで作成した。蛍光偏光解消法では,蛍光偏光計を利用し膜に埋めた蛍光物質の蛍光異方度を求めることで膜脂質流動性変化を測定した。今回、蛍光物質としてDPHを使用し、これをヒト赤血球膜脂質に埋め込み,33℃,35℃,37℃,39℃各温度において、セボフルラン濃度0,1,2,3,4,5%に対する膜脂質流動惟変化を測定した。各温度で一元配置分散分析を行い、有意差がある場合、post・hocとしてscheffe法を用いた。 [結果と考察]各温度において、濃度依存性に膜脂質流動性は増加した。4%と5%では、0%と比較して各温度で有意な増加を認めた。しかし,5%における変化度は、温度が2℃上昇した時と等価であり、その変化は極めて小さいと考えられた。したがって、本法においても、臨床濃度のセボフルランの膜脂質に対する影響は、従来言われているように極めて小さいという結果となった。
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