2003 Fiscal Year Annual Research Report
歯根膜の保存・再生法の確立と新たな歯の移植法の開発
Project/Area Number |
15659492
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
丹根 一夫 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (30159032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加来 真人 広島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (10325194)
河田 俊嗣 広島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (80281161)
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Keywords | 歯根膜再生 / 凍結保存 / 抜去歯 / 培養 / 自家移植 / エナメルマトリックス蛋白 / ALP活性陽性歯根膜由来細胞 / 人工骨 |
Research Abstract |
歯科矯正治療における小臼歯の抜歯や、智歯の抜歯等正常な歯根膜組織を有するにも関わらず抜歯を余儀なくされる症例は少なくない。抜歯時の機械的操作等により損傷した歯根膜を再生した後、抜去歯を長期的に凍結保存し、その後自家あるいは他家移植を行う態勢を作り上げることができれば、天然のインプラント体としてその利用価値は非常に高くなるものと考えられる。このような観点から我々は移植歯の歯根膜保存に着目した歯の凍結保存法の確立を目指し研究を行ってきた。 実験には、矯正治療のため便宜抜去された小臼歯を用いた。ダイヤモンドバーを用いて歯頚部に深さ0.5mmのノッチを付与し、歯冠側根面の歯根膜およびセメント質を除去した。無処置の抜去歯、抜去歯全面にエナメルマトリックス蛋白(EMD)を塗布したもの、さらに人工骨にEMDを塗布した歯を埋め込んだものをdish上に静地した。培地は10%FBS含有α-MEMを使用し、14日間および30日間培養した。これらの群間で、残存歯根膜から新たにALP活性陽性歯根膜細胞に被覆された根面の範囲を比較した。 その結果、無処置のものと比較して、EMDを塗布した歯根面において残存歯根膜から増殖したと思われる広範囲におよぶALP活性陽性歯根膜由来細胞による根面の被覆が認められた。さらに、EMDを塗布し、人工骨に埋め込んだ歯の歯根面においては、蛋白を塗布して静地したものと比較して、ALP活性陽性歯根膜由来細胞による根面の被覆はさらに広範囲に及んでいた。 以上の結果から、EMDが歯根膜欠損部歯根面に歯根膜由来細胞を誘導することが明らかとなり、さらに、これらの歯を人工骨に埋め込み、口腔内と類似した環境で培養することにより、歯根膜組織再生をより向上することが示唆された。このようにEMDを塗布し、人工骨に埋め込んで培養した抜去歯を、超低温ディープフリーザ内に長期的に凍結保存することにより、その後の自家移植の予後が優れたものとなると期待される。
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