2003 Fiscal Year Annual Research Report
「細胞シート工学」に基づいた新規歯周治療法の開発に関する研究
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15659496
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
石川 烈 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (10014151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 敦博 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (10242207)
野口 和行 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (90218298)
小田 茂 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 講師 (70160869)
長澤 敏行 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (90262203)
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Keywords | 細胞シート / 歯周組織再生 / 歯根膜 / セメント質 / 細胞移植 / 温度応答性培養皿 / 組織工学 / N-(イソプロピルアクリルアミド) |
Research Abstract |
ポリスチレン製培養皿表面に、電子線照射によってN-(イソプロピルアクリルアミド)を共有結合的にグラフトして得られた培養皿の表面構造を詳細に検討し、重合条件の最適化を行うことによって摂氏32度付近で可逆的に親水性⇔疎水性と表面構造が変化する温度応答住培養皿の作成に成功した。 この温度応答性培養皿上におけるヒト歯根膜組織由来細胞の培養条件を検討した結果、培養液および添加FBSの濃度を調整することにより、通常の培養皿を用いた場合と同様に培養することが可能となった。また培養皿からの回収・輸送を目的としてアスコルビン酸を添加しコラーゲン産生を促進させることにより、輸送に耐え得る強度を持った移植可能な歯根膜由来細胞シートの作成に成功した。 低温処理によって歯根膜由来細胞は一枚の培養細胞シートとして回収することができた。得られた細胞シートについてマトリックスタンパク及び表面マーカーを免疫化学的に検討した結果、従来の酵素処理に比較して、より非侵襲的に培養細胞と付随するマトリックスタンパクを回収できることが明らかになった。特にI型コラーゲンおよびフィブロネクチンを豊富に保持し、また高いβ1、α5インテグレン活性を維持しており移植後の定着・増殖に有効に作用することが期待された。 更にこの細胞シートを免疫不全ラットの歯周組織欠損モデルに移植した結果、対照側では著しい骨性癒着と続く歯根吸収が確認され歯根膜組織は殆ど再生されなかったが、移植群である実験側では明らかな歯根膜の再生が確認された。この新生組織は歯根表面に沈着したセメント質様組織にアンカーし機能的に走行する線維組織から構成され、生来の歯根膜組織に非常に近い形態を示していた。 以上の結果から歯根膜由来細胞シートの移植は有効な手段となり得ることが示唆された。今後は免疫組織学的手法を用いて、移植細胞の生体内動態および再生組織の詳細な検討を行う予定である。
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