2004 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の非配偶者間人工授精の実態と支援に関する研究
Project/Area Number |
15659513
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
清水 清美 東京医科歯科大学, 大学院・保健衛生学研究科, 助手 (70323673)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長沖 暁子 慶応義塾大学, 経済学部, 助教授 (80118984)
日下 和代 東京医科歯科大学, 大学院・保健衛生学研究科, 助手 (40302872)
|
Keywords | AID / Telling / 情報提供 |
Research Abstract |
【目的・方法】AID(非配偶者間人工授精)を選択した親が、産まれる(た)子どもに事実を伝えることに関する認識、そのよう認識に影響あたえる背景(家族観、子ども観、不妊・非配偶者関人工授精に関する考え、周囲との人間関係など)を明確にすることを目的とした。対象は、AID実施中あるいは治療予定である出産体験のない女性15名。半構成的面接調査を実施し、同類のカテゴリーに分類した。 【結果】NO-Telling群は12名、Telling群は3名だった。圧倒的にNO-Telling群が多く、AIDで子どもを得た114カップルを対象にした吉村の調査と同様の結果であった。 NO-Telling群は、家族や子どもに対し、「子どもがかわいそう・子どもに負担をかけたくない」「親子関係が崩壊する懸念」「夫婦間の子どもに代わりはない」があった。不妊やAID、周囲の人間関係には、「子どもが将来、父子関係に疑問を持つことの恐れ」「周囲や子どもさえも秘密にしたい」、「極力祖父母を巻きこみたくない」があった。夫がTellingを望まないという態度が、女性のTellingに対する態度を消極的にしていた。一方、Telling群は、家族や子どもに対し、「隠し事のない親子でありたい」「産まれてくる子の幸せ」があった。不妊やAID、周囲の人間関係に対して、「子どもが自然に受け入れられる環境を整えたい」があった。Telling群の3名とも、AIDで産まれた子どもの話を聞いて早期告知の必要性を情報として持っていた。AIDで産まれた子どもの話を聞くことでNO-TellingからTelling群へ移行していた。AIDで産まれた子どもの話しを聞く体験は、親が、その後の親子関係のあり方を決定していく上で、『うまれる子どもの立場でものを考える』機会になっていた。 【考察】NO-Telling群、Telling群、双方とも生まれてくる子どもと自分たち家族を守るための対処であった。ここにある、親の思いを十分に考慮すべきである。ほとんどAIDの情報がなく、相談者も限られている現状では、子どもの幸福が何であるか、子どもの立場になって考える事は難しい。AIDで出生した子どもの体験を聞くことで、Tellingへの認識が変化するということは、AID選択を考えている親には重要な情報であるといえよう。日本の文化にTellingが最適かどうかは、不明であるが、情報のひとつとして必ず提供されるべき内容であると考える。また、夫婦間でTellingに対する相違がある場合、夫の意見が優先される要因に、生物学的な親としての立場の違い、子どもや周囲の人々への男性不妊の告知の難しさなどがあると推察された。
|
Research Products
(2 results)