2004 Fiscal Year Annual Research Report
北西太平洋亜寒帯域における植物プランクトンの死亡とその物質循環過程とのかかわり
Project/Area Number |
15681001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 光次 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助教授 (40283452)
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Keywords | 海洋 / 北太平洋 / 植物プランクトン / 細胞死 / 現場鉄散布実験 / Thalassiosira nordenskioeldii / 細胞消化法 / ブルーム |
Research Abstract |
平成16年夏期に行われた北西太平洋亜寒帯域の中規模現場鉄散布実験において、植物プランクトン群集の細胞生存率を測定し、植物プランクトンの細胞死と海水中の鉄濃度との関係を明らかにすることを試みた。実験期間中、体長10μm以下のウルトラ植物プランクトン(ラン藻Synechococcusおよびウルトラ真核植物プランクトン)が常に植物プランクトン群集中で優占していた。鉄散布後、Synechococcusの海水中の細胞密度、細胞内クロロフィル蛍光強度(増殖活性の指標)、および細胞生存率は有意に増加したが、実験後半、海水中の溶存鉄濃度減少とともに、これら値は減少した。従って、海水中の溶存鉄濃度はSynechococcusの生長および細胞死を支配する因子の1つであることが明らかとなった。一方、ウルトラ真核植物プランクトンの海水中の細胞密度や細胞内クロロフィル蛍光強度は、鉄散布後、有意に増加したが、細胞生存率は、鉄散布前後で変化せず、50-80%であった。また、溶存鉄濃度とウルトラ植物プランクトンの細胞生存率の間に相関はみられなかったことから、ウルトラ真核植物プランクトンの細胞死を支配する因子が海水中の溶存鉄以外にあることが推測された。 北西太平洋亜寒帯域(親潮域)で春季ブルームを形成する中心目珪藻Thalassiosira nordenskioeldiiの単離培養株をバッチ培養法で生育し、細胞生存率の測定を行った。実験開始7日目(対数増殖期)の細胞生存率は89±4%であったが、栄養塩環境の悪くなった68日目においても細胞生存率は78±3%と比較的高い値を維持していた。これについて、T.nordenskioeldiiは、環境状況が悪くなると休眠胞子を形成し、劣悪な環境においても生き延びる戦略を持つためと考えられた。
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Research Products
(4 results)