2004 Fiscal Year Annual Research Report
原子炉を使ったニュートリノ質量および混合角の精密測定
Project/Area Number |
15684004
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 邦雄 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10242166)
|
Keywords | ニュートリノ / 原子炉 / ニュートリノ振動 |
Research Abstract |
2002年3月から2004年1月までのカムランドデータを用いた原子炉ニュートリノ観測によるニュートリノ振動の探索・研究を行った。ニュートリノ反応の位置再構成およびエネルギー再構成のプログラムを改良することで、有効体積の拡張が可能となり、766.3トン年の観測データを得た。これは、原子炉ニュートリノ欠損の証拠を示した最初の論文でのデータの4.7倍の観測に相当する。原子炉の出力が小さい時期も有ったが、検出効率の向上も行うことで、ニュートリノ振動が無い場合で365.2±23.7事象の予測反応数、17.8±7.3事象のバックグラウンドとなった。観測された事象数は258で、明らかに予測値より少なく原子炉ニュートリノ欠損を99.998%の信頼度で追証した。さらに高統計のデータにより、エネルギースペクトルの研究が可能となり99.6%以上の信頼度で、エネルギースペクトルに歪みが生じていることの証拠を得た。事象数の欠損とスペクトルの歪みを組み合わせると99.999995%以上の信頼度で、ニュートリノ振動が無いことを否定したことになる。さらに、有効距離÷エネルギーの変換により、エネルギースペクトルを、ニュートリノ伝搬距離の関数としての生存確率に書き直すことで、ニュートリノ振動パターンの約一周期を示すことができ、カムランド単独でニュートリノ振動の直接証拠を示すことに成功した。振動パターンがはっきり捕らえられたことで、ニュートリノ振動パラメータの精密測定が可能となり、太陽ニュートリノ観測結果と,合わせるとtan^2θ=0.40^<+0.10>_<-0.07>およびΔm^2=7.9^<+0.6>_<-0.5>×10^<-5>eV^2を得た。特に、質量2乗差はカムランドによって高精度で決定されている。ニュートリノ振動パラメータが精密に決定されたことは、電子型ニュートリノの伝搬を理解できたということを意味しており、ニュートリノをプローブとして使った地球・太陽内部の観測の基礎となる。
|
Research Products
(3 results)