2004 Fiscal Year Annual Research Report
船体構造保全情報システム構築のための基礎技術に関する研究
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15686036
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
川村 恭己 国立大学法人横浜国立大学, 大学院・工学研究院, 助教授 (50262407)
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Keywords | 船体構造保全 / 格付け手法 / クオリティシッピング / 情報システム / リスク解析 / 腐食 |
Research Abstract |
就航中の船舶に生じる腐食やき裂などの損傷は、構造点検により発見し、安全性確保のために適切な処置を行う必要がある。研究代表者らは、船体の保守管理を効率よく行うために、船体構造保全情報システムの概念を提案してきた。船体構造保全情報システムでは、船体の構造情報と検査等で得られた損傷情報をデータベースを用いて一元管理しそれを元に損傷の危険性を予測し、検査や運航計画の作成や修理支援を行うという考え方である。これにより効率的かつ高度な保守管理が可能になると考えられる。本研究では、現在までに、損傷情報と構造情報を容易に取り扱うためのデータベース構築に関する検討と、構造健全性評価のための強度解析モデル生成手法に検討してきた。ところで、近年タンカーの重油流出事故等が問題になっているが、これらの原因であるサブスタンダード船を排除するために、良い船をエンカレッジした方が効果的ではないかというクオリティ・シッピングの考え方が提唱されるようになってきた。クオリティ・シッピングとは、一定の明確な基準に基づき個船の評価・格付けを行うことで、良い船舶に対してインセンティブを付与するものである。今後、このような考え方を広めることにより、サブスタンダード船が減少していくことが期待されるが、現状では合理的な格付け評価手法の確立が行われていないために、インセンティブを与えることによる個船間の差別化が効果的に行われているとは言えない。そこで、本年度本研究では、船体検査支援システム実現のための基礎技術として、構造保全情報を利用した合理的な船舶の格付け評価手法の検討を行った。具体的には、構造保全情報と過去の海難事故データを基にしたリスク分析を用いて、個船の格付け評価を行うコンセプトを提案した。提案したコンセプトに基づいて、簡単な格付け評価モデルの構築と、仮想的な箱船モデルにより格付け値Qの試計算を行った。この値は個船が1年間運航するときのリスクを表すものである。行った評価は、非常にラフであるが、良い船には良い評価を与えることが可能であり、また、データベースに蓄えられた過去の構造保全情報(検査情報)を用いることで未来における評価も行えることから、本コンセプトの可能性を示すことができた。今後、本コンセプトの実現のためには、詳細な海難事故データベースの充実とそれを用いた合理的な格付け評価モデルの構築、および、合理的な強度評価・解析手法の導入があげられる。
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Research Products
(2 results)