Research Abstract |
これまで,挿し木直前のキュウリ実生に低湿度処理をすることによって,挿し木直後の水ストレスを緩和できることを示し,最適な処理時間,光環境条件を明らかにしてきた.平成17年度では,これまでの基礎知見を植物生産現場に応用することを目的として,断根接ぎ木苗生産現場において,台木用カボチャおよび穂木用キュウリ実生に1日間低湿度処理を行い,それらを断根接ぎ木し,培地に挿し木した後の発根を調べた.低湿度処理には,生鮮野菜貯蔵用の冷蔵庫に照明装置,ヒータおよび送風機を導入した簡易低湿度処理装置を作製して用いた.この処理装置によって気温30℃,相対湿度10%,光合成有効光量子束密度300μmol m^<-2> s^<-1>の低湿度条件をつくることができた.実験の結果,台木用カボチャへ低湿度処理することによって,低湿度処理せずに温室で育成した実生を断根接ぎ木したときと比較して,挿し木後の発根を約20%促進できることが示された.また,穂木用キュウリ実生へ低湿度処理することによって,挿し木後における穂木部分の成長を約40%促進できた.処理直後における台木用カボチャの含水率は約1%分低下し,葉面コンダクタンスは処理前の約17%に低下していた.このことから,低湿度処理による成長促進効果は,これまでの知見と同様に挿し木直後における蒸散抑制による水ストレス緩和が一因であると考えられた.また,低湿度処理によって処理直後の乾物重が温室で育成した実生よりも増大していたことから,低湿度処理中に乾物が増加したことも低湿度処理による成長促進の一因として考えられる.本実験では,低湿度処理による発根促進のメカニズムは十分に解明されなかったが,簡易な閉鎖型施設でも安定的に乾物を増大させ,さらに含水率を低下させることによって挿し木後の成長を促進できたことは,閉鎖型施設の短期間利用という観点で実用上重要な知見である.
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