2003 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子KLF5の心血管リモデリング制御機構の解明と治療への応用
Project/Area Number |
15689013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新藤 隆行 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (90345215)
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Keywords | リモデリング / 動脈硬化 / 心肥大 / 線維化 / アンジオテンシン / 転写因子 / レチノイン酸 / 遺伝子欠損マウス |
Research Abstract |
【背景】我々は心血管リモデリングの分子機構に注目し、細胞活性化に関連する転写因子KLF5/BTEB2を分離同定した。続いて我々は、生体におけるKLF5/BTEB2の機能を解明するためKLF5/BTEB2遺伝子欠損マウスを作成した。KLF5/BTEB2遺伝子欠損マウスでは、種々の臓器傷害に対する間葉系細胞の反応性の低下が認められ、心筋線維化と心肥大、異物に対する炎症反応、血管新生、血管傷害時の平滑筋細胞増殖等が著明に低下していた。これらの結果はKLF5/BTEB2が、心血管リモデリングに重要な役割を果たしていることを示す初めての知見である。本研究では更に、KLF5/BTEB2の活性を変化させる薬剤をスクリーニングし、心血管リモデリングに及ぼす影響を検討した。 【方法、結果】KLF5/BTEB2+/-では、病変部におけるPDGF-Aの発現が低下していたことから、KLF5/BTEB2とPDGF-Aの関係について検討を進めた。アンジオテンシンIIによって刺激した培養心線維芽細胞では、KLF5/BTEB2の誘導に続いてPDGF-A発現亢進が確認され、またKLF5/BTEB2は濃度依存性にPDGF-A遺伝子の転写を亢進することが確認された。KLF5/BTEB2によるPDGF-A転写活性を変化させうる化合物のスクリーニング行ったところ、レチノイン酸受容体(RAR)αに選択性の高いアゴニストであるAm80がKLF5/BTEB2依存性のPDGF-A遺伝子転写を抑制することが確認された。更にレチノイン酸受容体(RAR)αがKLF5/BTEB2と結合することが、免疫沈降法で確認された。Am80をin vivoで投与すると、アンジオテンシンII持続投与および腹部大動脈狭窄による心筋線維化と心肥大が抑制された。更に大腿動脈カフ傷害時における炎症反応と肉芽形成、および血管内膜肥厚が抑制された。一方、PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤投与により、KLF5/BTEB2+/-マウス類似の表現型が再現されることが確認された。 【考察】転写因子KLF5/BTEB2を標的とした薬剤スクリーニングが、複数のモデルにおいて、心肥大、線維化の抑制、血管傷害の抑制に有効であることが示された。KLF5/BTEB2に作用する核内転写因子やコファクターの機能を修飾する薬物を探索することにより、新しい治療薬の開発が期待される。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Niu P, Shindo T, et al.: "Accelerated cardiac hypertrophy and renal damage induced by angiotensin II in adrenomedullin knockout mice"Hypertension Research. 26,9. 731-736 (2003)
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[Publications] Niu P, Shindo T, et al.: "Protective Effects of Endogenous Adrenomedullin on Cardiac Hypertrophy, Fibrosis, and Renal Damage"Circulation. (in press). (2004)