2004 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子KLF5の心血管リモデリング制御機構の解明と治療への応用
Project/Area Number |
15689013
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
新藤 隆行 信州大学, 大学院・医学研究科, 教授 (90345215)
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Keywords | 心血管リモデリング / KLF5 / アンジオテンシンII / 心肥大 / 心線維化 / 血管新生 / 動脈硬化 / レチノイド |
Research Abstract |
我々は、心血管リモデリングの分子機構に注目し、細胞活性化に関連する転写因子、KLF5を分離同定した。KLF5遺伝子欠損マウスでは種々の臓器傷害に対する間葉系細胞の反応性低下が認められ、心線維化と心肥大、血管新生、動脈硬化性変化等が著明に低下していた。これらの結果はKLF5が、臓器傷害後に誘導される線維芽細胞、平滑筋細胞の活性化と増殖、その結果としての線維化、血管新生、ひいては臓器リモデリングに重要な役割を果たしていることを示す知見である。 次に、KLF5の転写活性を特異的に変化させる化合物のスクリーニングを行ったところ、合成レチノイン酸受容体(RAR)リガンドのAm80とLE135が、KLF5依存性のPDGF遺伝子プロモーター活性を変化させうる事を明らかとした。RARαに特異性の高いアゴニストであるAm80はKLF5によるPDGF-Aの転写を抑制し、反対にRARα及びβに特異性の高いアンタゴニストであるLE135は、KLF5によるPDGF-Aの転写を亢進した。更にKLF5とRARは核内で結合した状態で存在するが、Am80投与下では、その結合率が低下し、LE135投与下では、その結合が亢進することを確認した。 Am80はKLF5活性を抑制する作用を示すが、実際に、Am80を大腿動脈周囲にカフを留置して血管に傷害を加えたマウスに経口投与したところ、新生内膜の形成が抑制されることが確認された。更にAm80投与により、アンジオテンシンII持続投与モデルにおけるマウス心臓の線維化と心肥大が抑制され、正常な心機能が維持されることが確認された。 以上の様に、KLF5を標的として、その転写活性を調節する薬剤を用いることによって、心血管リモデリングを制御しうる可能性が考えられる。今後、KLF5の核内転写因子ネットワークによる転写調節機構の更なる解明が、循環器疾患の新たな予防及び治療法開発につながるものと期待される。
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Research Products
(7 results)