Research Abstract |
視覚復号型(k,n)秘密分散法((k,n)-Threshold Visual Secret Sharing Scheme,以下では(k,n)-VSSSと略記する)は,白黒2値画像に対して有効な秘密分散法の1つである.(k,n)VSSSでは,基本行列という特別な性質をもつ行列を用いて,秘密画像をシェアと呼ばれるn枚の画像に暗号化する.シェアが透明なシートに印刷されていれば,任意のk枚のシェア(2【less than or equal】k【less than or equal】n)を重ねれば秘密画像が復元でき,逆にどのk-1枚以下のシェアからも秘密画像の情報が全く漏れない.基本行列の性能は,通常,シェアの重ね合わせによって得られる画像の鮮明さを表すパラメータαの大きさで評価される.最大のαをもつ基本行列を求める方法は,特殊な場合を除いて陽に求めることはできず,一般の場合には線形計画法によるアプローチがあるだけであった. 本研究では,線形計画法とは異なるアプローチから,最大のαをもつ基本行列を求める方法を考えた.実際,本研究では,総n次多項式と同一視できる行列の集合を考え,その行列の集合の中で(k,n)-VSSSの基本行列を構成する.すでに,(k,n)-VSSSの基本行列は,あるn-k+1次元の線形空間の格子点に対応することがわかっている.しかしながら格子点は無限個あるので,無限個の格子点の中から,いかに最適な基本行列に対応する格子点を見出すかが問題となっていた.本研究の最大の成果は,有限個の格子点の探索で,最適な基本行列を求めるアルゴリズムを開発したことにある.開発したアルゴリズムは初等的であり,実際にはn-t+1元の連立1次方程式の解を((n+1)/(t+1))回求めれば,得られた解を用いて最適な基本行列が構成できる.nが10程度の実用的な範囲であれば,このアルゴリズムは極めて高速に動作する. 開発したアルゴリズムは秘密画像の黒画素が完全に復元できる場合にも適用できる.黒画素が完全に復元できる(k,n)-VSSSの基本行列の1つは,以前から知られているが,本研究の成果により,n【less than or equal】12の範囲では,得られていた基本行列がαを最大にするという意味で最適であることを実験的に示すことができた.
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