Research Abstract |
本研究では,広空間領域での,音像定位の精度と映像支配の関係を定量的に把握することを目的とし,映像と音源の関連性が相互に強く,かつ移動する刺激を対象に,中心視野領域のみでなく周辺視野領域での視聴覚相互作用についての実験を行った.映像刺激には走るパトカーのCGムービー,音声刺激にはそのサイレン音を用いた.映像は,3台の液晶プロジェクタを使用し,0.85m(H)×3.60m(W)のスクリーン上に提示した.各プロジェクタにより投影される領域を"左周辺視領域(領域L)","中心視領域(領域C)","右周辺視領域(領域R)"とそれぞれ定義した.中心視領域には,信号機の青信号がスクリーンの中央になるように配置し,予め実験協力の同意を得た被験者に,実験中は青信号を凝視するように指示を与えた.音声刺激は,スクリーンの後方に配置したスピーカより再生した.スピーカは,台車の上に設置し,水平面方向をレールに沿って移動させた.被験者は,各領域(L,C,R)において,様々な組み合わせパターンで提示された,映像刺激と音声刺激について,(A)全体的に一致している,(B)部分的に一致している,(C)一致していない,の3段階で評価を行った.その結果,次の傾向が得られた.1 視聴覚刺激提示開始時の音像は,提示終了時よりも,映像に補足されやすい(出だし効果).2 映像刺激と音刺激が反対方向に移動している場合,例え映像と音像が同じ位置に提示されていても,一致しているとは感じにくい.3 映像による,音像の捕捉現象は,中心視領域よりも周辺視領域で強く生じる. 4 音源方向に移動している映像は,音源方向から離れて移動している場合よりも,その音像を捕捉しやすい.
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