Research Abstract |
本研究では,音像と映像支配の関係を定量的に把握することを目的とし,映像と音源の関連性が相互に強い刺激を対象に,中心視領域のみでなく周辺視領域を含めた広領域での視聴覚相互作用について調査を行った.ここでは,視聴覚刺激の大きさの知覚に注目し,様々な大きさの映像とそれに関連した音声を提示する実験を実施し,その印象の強さについて検討した.映像刺激にはパトカーのCG画像を用い,音声刺激にはそのサイレン音を用いた.映像刺激の大きさは0.20m(W)×0.08m(H)を基準とし,実験ではその1/3,1/2,1,2,3倍の5種類の画像を用いた.音声刺激については,60dBSPLを基準とし,±3dBずつ増減した合計9種類(48,51,54,57,60,63,66,69,72dB)の音圧レベルを採用した.映像刺激は,3台のプロジェクタを使用して3.6m(W)×0.85m(H)のスクリーン上に投影し,各プロジェクタにより投影される領域を"左周辺視領域(領域L)","中心視領域(領域C)","右周辺視領域(領域R)"とした.中心視領域には,信号機の青信号がスクリーンの中央になるように配置し,予め実験協力の同意を得た被験者に,実験中は青信号を凝視するように指示を与えた.実験では,映像(5種類)と音声(9種類)をランダムに組み合わせた刺激を,任意の順番で,L,C,Rいずれか1つの領域の中央に提示した.被験者には,実験刺激の印象について,「映像の印象の方が強いと感じた」か「音の印象の方が強いと感じた」のどちらかを回答してもらった.本実験により,以下の結果を得た.中心領域に比べ周辺領域の方が,映像刺激に対する等価音圧レベル(映像刺激の大きさに相当すると知覚される音声刺激の音圧レベル)は小さい.すなわち,中心領域より周辺領域の方が,音声の印象が強いと知覚されやすい.ただし,映像が大きくなると,中心領域と周辺領域での等価音圧レベルはほとんど等しくなった.
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