2003 Fiscal Year Annual Research Report
表面知覚におよぼす複数の奥行き情報の相互作用 ―比較認知心理学的検討―
Project/Area Number |
15700222
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
長坂 泰勇 立教大学, 文学部, 助手 (30339593)
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Keywords | 表面知覚 / 透明視 / 非感性的補完 / 比較認知 / リスザル |
Research Abstract |
非感性的補完と透明視の各視覚現象を直接比較可能な刺激を用いることによって,覆っている表面が透明または不透明な場合の覆われている対象の知覚について検討し,二つの現象の関係を考察した。本研究の結果から,被遮蔽表面の知覚に比べ透明な表面に覆われた対象がより正確に知覚されることが明らかになった.透明視実験において,ターゲット刺激は透明なクロスハッチ(傾き45度と135度の格子線分を重ね合わせた刺激図形)を透過して知覚されるよう構成されているため,クロスハッチ線分の幅(CHW)の大きさに関わらずターゲット刺激の知覚について十分な情報が呈示されている.これに対し被遮蔽条件ではCHWの大きさに依存して可視刺激断片の大きさも変化し,CHWの増加に伴い図形を知覚するための情報が減少するため,正答率が低下したと推測される.しかし被遮蔽輪郭実験と同様に透明視実験においてもCHWの増加に伴って反応時間が増加する傾向にあった.これは上の推測とは必ずしも一致しない結果である.なぜなら上述のように透明視における形の情報はCHWの変化に関わらず呈示されており,被遮蔽実験のように可視刺激断片の大きさの変化は起こっていない.しかし反応時間がCHWの大きさに影響されており,"透明な対象で覆われている"という現象が,"他の対象にまったく覆われていない"場合での現象とは知覚的に明らかに異なるものであると考えられる.すなわち透明視において奥行きや重なりを処理する過程が,非感性的補間に類似する知覚の体制化によって生起され形の知覚が起き,その後に透明性の知覚が生起すると推測される.またこの二現象において正反応時間にわずかな差が見られたことも,透明視に段階的な知覚の体制化がなれている可能性を重ねて示唆した.なお、本データと比較するためのリスザルのトレーニングが進行中であり、来年度以降に実験を行う予定である。
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