2003 Fiscal Year Annual Research Report
自発的に細胞周期を停止するヒト脳腫瘍細胞の分子機構解析
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15700270
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
横尾 英明 群馬大学, 医学部, 助手 (40282389)
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Keywords | 脳腫瘍 / シュワン細胞腫 / 細胞周期 / 細胞老化 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
腫瘍発生と細胞周期異常の密接な関連は多くの腫瘍で証明されている。しかし遺伝子解析によって腫瘍発生のメカニズムがある程度明らかにはなってきたものの、増殖を制御するという視点からの研究はまだ少ない。我々はシュワン細胞腫をモデルとして、自発的に細胞周期を外れて増殖を停止する腫瘍細胞の機構解析を行った。そのような腫瘍細胞は好酸性顆粒状物質が細胞質に蓄積しており、これは聴神経原発のシュワン細胞腫で有意に出現頻度が高いことを明らかにした。またこれらの細胞の細胞周期が停止しており、なおかつアポトーシスにも陥っていないことを、Ki-67抗原の発現解析およびTUNEL法で明らかにした。好酸性顆粒状物質は通常の腫瘍においてはほとんど出現しないことから、組織化学的にその性状を明らかにすることが本質的課題であると考えて解析を試みた。その結果、ニトロチロシン抗原が選択的に発現していることを見いだした。このことは一酸化窒素による酸化ストレスが局所において作用した結果、細胞周期が停止してなおかつ細胞死にも至らないという、細胞老化の表現型を発現するに至ったと考察した。内在する一酸化窒素によってin vivoの腫瘍細胞の細胞周期が修飾されている可能性を指摘した研究は、我々の知る限りなされていない。細胞に有害な化学療法剤をあえて使わなくても、生体内に内在する機構をうまく引き出すことで腫瘍の制御が可能になることを示唆していると思われる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Yokoo H, Arai H, Isoda K et al.: "Characterization of eosinophilic hyaline droplets in schwannoma."Acta Neuropathologica. 105(2). 170-176 (2003)
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[Publications] Yokoo H, Arai H, Kamiya M, Sasaki A, Hirato J, Nakazato Y.: "A high incidence of eosinophilic hyaline droplets in acoustic schwannoma."Brain Tumor Pathology. 20(suppl). 147 (2003)