2004 Fiscal Year Annual Research Report
エストロゲンおよび内分泌攪乱物質への発達期曝露が海馬機能に及ぼす影響に関する研究
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15700280
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
佐藤 薫 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 主任研究官 (10311391)
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Keywords | エストロゲン / 培養海馬切片 / 歯状回 / CA3野 / BDNF / アストロサイト / グルタミン酸トランスポーター / 膜エストロゲン受容体 |
Research Abstract |
昨年度,培養海馬スライス標本おいてエストロゲンおよび内分泌撹乱物質が苔上線維-CA3シナプス形成を促進することを発見した.今年度はこのメカニズムについてさらに詳細に検討を進めた.具体的には,培養歯状回切除海馬切片における,後シナプスマーカーPSD95とDiIを用いた二重染色,歯状回,アンモン角,およびこれらの混合神経細胞からなる3種類の部位特異的初代培養系を用いて,エストロゲンによるシナプス形成促進が苔上線維-CA3シナプス特異的であること,さらに歯状回に高濃度に局在しているBDNFをmediatorとしてエストロゲンが作用を発揮していることを明らかにした. 内分泌撹乱物質が脳内へ移行する際,神経細胞に到達する前にアストロサイト層を通過することをふまえ,エストロゲンおよび内分泌撹乱物質のアストロサイトに対する作用についても検討した.近年,アストロサイトは神経細胞間のシナプス伝達において積極的な役割を果たしている可能性が示唆されているが,その代表的メカニズムの一つがグルタミン酸トランスポーターを介した神経伝達物質グルタミン酸の取り込みである.昨年度,エストロゲンがアストロサイト細胞膜上に存在するアルファタイプエストロゲン受容体を介してグルタミン酸取り込みを阻害するという,新規の作用を発見した.今年度は,この作用メカニズムを詳細に検討し,アルファタイプ膜エストロゲン受容体→PI3K活性化→Akt活性化→NOS活性化によるNO産生→グルタミン酸トランスポーターの機能阻害というカスケードがエストロゲンによって活性化されることを,リン酸化AktのWestern blotting, NOキレーターDAF2-DAを用いたNO可視化により証明した.
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