2004 Fiscal Year Annual Research Report
単一筋細胞のプロトンNMRと分子動力学シミュレーション:収縮反応中の水動態
Project/Area Number |
15700308
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
山口 眞紀 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (30271315)
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Keywords | プロトン / NMR / 水 / ミオシン / アクチン / 分子動力学 / 弱結合 / NPM |
Research Abstract |
1)架橋ミオシン・アクチンの弱結合状態でのプロトンNMR測定 N-phenylmaleimide (NPM)はミオシンを分子内架橋することによりATP加水分解反応を阻害する。この処理をした筋線維をATPを含む低イオン強度溶液に浸すと、ATPを結合したミオシンとアクチンが偽弱結合クロスブリッジをつくる。このときの筋線維のプロトンNMR測定を行った。NPM処理後の筋線維の水性状は生理的イオン強度では処理前と大きく変化しなかったがイオン強度を下げることで、フィラメント格子内でタンパクに強く束縛される「水和水」が増加する傾向を示した。この変化は強結合生成による変化と同じ方向であり、アクトミオシン結合がその性質によらず水をより強く束縛することが示唆された。 2)筋原線維懸濁液でのプロトンNMR測定 筋フィラメント格子外に局在する束縛水の性質を調べるために筋原線維懸濁液でのプロトンNMR測定を行らた。筋を弛緩から硬直状態にすると、束縛水の時定数が短くなり水がより強く束縛される方向に変化した。この変化は筋線維標本で測った時の水性状変化の方向と一致し、弛緩から硬直への変化による束縛水の増大は細胞膜がなくても起こることが示された。 3)ミオシンモータードメイン周囲の水の分子動力学シミュレーション ミオシン頭部の結晶構造を基に(PDBID2MYS)周期境界、定圧条件でのタンパク・水系の分子動力学シミュレーションを行った。ADPとフッ化アルミニウムを結合した初期の結晶構造からこれらを除いた後、310Kにて熱運動させることで、モータードメイン周囲の水和水の数は有意に増大し、弛緩から硬直の変化にともなって水がより強く束縛される実験結果と符号した。この変化が加水分解部位の構造変化に直接起因するかどうかを現在検討中である。
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