2004 Fiscal Year Annual Research Report
壁せん断応力影響下における血管内皮細胞の膜受容体を介した情報伝達機構の解明
Project/Area Number |
15700337
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
工藤 奨 芝浦工業大学, 工学部, 講師 (70306926)
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Keywords | 血管内皮細胞 / せん断応力 / 情報伝達 / 膜受容体 |
Research Abstract |
本年度は,粒子追跡結果より膜タンパク質の拡散係数と移流速度を算出し,0-2dyn/cm2の範囲で影響を調べた.また,細胞内情報伝達物質であるカルシウムイオンの測定もおこなった. 実験は,昨年度と同様にヒト大動脈由来内皮細胞を用い,せん断応力の負荷には平行平板型の流路を使用した.また膜タンパクにはGPIアンカー型タンパク質であるCD59に着目しその運動を解析した.細胞内カルシウムイオンの測定には,カルシウムグリーンを用いた.また,カルシウムイオンの局所濃度上昇を誘導させるために,ケージドIP3およびレーザーフォトリシスシステムを使用した. 膜タンパクの移流速度はせん断応力が増加するにつれて,線形に増加した.一方,拡散係数に関しては,0-1.0dyne/cm^2の間ではほぼ一定の拡散係数(D=4.0×10^<-10>±4.0×10^<-12>cm^2/s)が計測された.ところが,2.0dyne/cm^2では拡散係数は29×10^<-10>±8.0×10^<-10>cm^2/sと急激に増加した.2.0dyne/cm^2での急激な拡散係数の上昇は血管内皮細胞の細胞膜の状態が変化していることを示しており,せん断応力の影響を受け細胞膜タンパクの移動量を変化させることが分かった. カルシウムイオンに関しては,細胞内のケージドIP3を局所で活性化させると細胞内カルシウムイオンの上昇が観察された.同一細胞内においても,IP3を活性化させた部位の違いによりカルシウムイオン濃度上昇に違いが観察された.さらに,内皮細胞にせん断応力を負荷すると,IP3を活性化させた細胞のカルシウムイオン濃度上昇後,下流に位置する細胞に次々とカルシウムイオンが伝播していく様子が観察された.以上の結果から,せん断応力の負荷により細胞膜タンパクの局所的な移動変化が起き,そのことが細胞内情報伝達と深く関与していると推察した.
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Research Products
(6 results)