2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15700344
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
田口 哲志 独立行政法人物質・材料研究機構, 生体材料研究センター, 研究員 (70354264)
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Keywords | 組織接着剤 / クエン酸 / 架橋剤 / コラーゲン / ヒドロキシスクシンイミド |
Research Abstract |
外科手術等による創傷部の閉鎖・接合を簡便に行うため、医療用接着剤が用いられている。現在、臨床に用いられている接着剤は、「シアノアクリレート系」、「ゼラチン-アルデヒド系」、「フィブリングルー系」接着剤に大別される。シアノアクリレート系とゼラチン-アルデヒド系は、もともと生体に存在しない合成接着剤であるため、接着強度は高いが、接着剤の反応・分解に関与するアルデヒド化合物が高い毒性を示し、疾患部位の治癒を阻害する。一方、フィブリングルー系は、血液凝固過程を用いる接着剤であるため毒性は低いが、同時に接着強度も低いという欠点がある。このように、現在臨床で用いられている接着剤はそれぞれ一長一短があり、高い接着強度と低い毒性を合わせ持つ医療用接着剤が強く求められている。 そこで本研究では、クエン酸にスクシンイミジル基を導入した誘導体(CAD)を合成し、このCADを硬化成分とし、生体高分子のコラーゲンを硬化成分とする2成分系の接着剤を開発した。今回は、ブタ軟組織に対する接着強度および硬化成分の細胞毒性について評価を行った。カルボジイミド存在下でクエン酸とN-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)を反応させることにより、CADが収率約80%で得られた。^1H-NMRによりクエン酸のカルボキシル基がすべて活性エステル化されていることを確認した。接着強度は、CADおよびCol濃度の増加に伴い増加した。Col濃度50%、CAD濃度が100mMでは、元の組織の引き裂き強度にほぼ匹敵する高い接着強度を持つことが明らかとなった。CAD及びCol濃度の増加に伴う接着強度の増加は、ゲルの架橋密度が増加したことによるものであると考えられる。一方、細胞培養によりCADの細胞毒性を調べた結果、CADはクエン酸と同程度のIC50値を示し、毒性が低いことが明らかとなった。さらに、「ゼラチン-アルデヒド系」と比較すると毒性が1/10以下になることが明らかとなった。 以上の結果から今回開発した医療用接着剤は、生体組織を引き裂くほどの高い接着強度を持ち、硬化成分であるCADの細胞毒性も非常に低いことが明らかとなった。
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