Research Abstract |
本研究では,外部加振により管の内圧変化を発生させ,管壁の粘弾性特性を計測する手法の開発を行った.概要を以下に述べる. シリコーンゴム管を模擬血管として用いて,水槽実験系において計測部位近傍を加振することにより,計測部位に内圧変化を発生させることができることを確認した.同時に,内圧変化に伴う壁の厚み変化を,本研究者らが開発した超音波計測法を用いて計測したところ,5ミクロン以下の非常に微小な壁の厚み変化が計測された.計測された内圧変化波形と壁厚変化波形の加振に伴う成分の振幅を算出することにより,壁弾性率を算出した.内圧変化(応力)と壁厚変化(ひずみ)の振幅から算出した弾性率は,複素弾性率の絶対値に対応する.加振の周波数を掃引して各周波数において壁弾性率を算出したところ,加振の周波数とともに弾性率が上昇する傾向が見られた.このような傾向は粘弾性モデルの一つであるVoigt模型により説明できることから,壁の粘弾性モデルとしてVoigt模型を仮定して,計測した周波数特性にフィッティングすることにより粘性率を推定した. ヒト頸動脈におけるin vivo計測では,上腕を加振することにより内圧変化を発生させ,その内圧変化が頸動脈まで伝搬することにより発生する頸動脈壁の厚み変化を計測した.また,トノメトリ血圧計を用いて,橈骨動脈おいて血圧波形を計測した.計測した壁厚変化と血圧変化の,外部加振により発生した成分の振幅を,周波数解析により推定することにより,加振周波数における頸動脈壁弾性率を算出した.加振周波数を掃引することにより,弾性率の周波数特性を算出したところ,上記基礎実験と同様に,周波数とともに弾性率が上昇する傾向が見られたため,Voigt模型を適用することにより,頸動脈壁の粘性率を推定した.本研究により計測された頸動脈壁の粘性率は,摘出した頸動脈に関する機械的試験により算出した文献値と同様の値であり,本研究において開発した手法により,動脈壁の粘性特性が非侵襲的に計測できたことを示すものと考えられる。
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