Research Abstract |
本研究ではリズミカルな運動中に,呼吸リズムが運動のテンポに引き込まれ同調してくる現象,いわゆる運動-呼吸同調(locomotor respiratory coupling : LRC)現象を意図的に誘発するためのシステムプログラムを開発し,その有用性を検討すること,更には特に呼吸リハビリテーションにおいて本システムを応用し,その有効性を確認することを目的としている.平成15年度は,まずLRC現象を誘発するシステムプログラムの開発と,健常成人を対象に開発したシステムプログラムの有用性を確認した. 今回開発したシステムの概要は次の通りである.本システムは,三菱電機エンジニアリング社製Strength Erog240に新たな機能を組み込んだものである.従来のエルゴメーターとしての機能に加え,ペダリング時に呼吸と運動のリズムを同調させるためのプログラムソフトを内蔵している.具体的な機能は以下の通りである.(1)ペダル回転角度と同期して「すって」「はいて」の音声と文字(シグナル)がパソコンの画面に現れる.(2)シグナルが出るタイミングはペダルの角度で設定するため,必ず一定のペダル角度で指示が出る.つまりペダルの回転速度が遅くなれば,シグナルもそれに合わせて遅くなる.(3)シグナルは様々なリズム比で出すことが可能であり,その比は1:1,3:2,2:1,5:2,3:1,7:2,4:1の7種類から患者に合わせて選択できる.(4)これらのシグナルは運動中に設定の変更が可能である.以上のシステムプログラムを三菱電機エンジニアリング株式会社と共同開発した. 次に本システムの有用性を検証するため,健常成人10名を対象に,換気性代謝閾値(Ventilatory Threshold : VT)レベルでの定負荷ペダリング運動時において,自由呼吸での運動,2:1リズム呼吸での運動,3:1リズム呼吸での運動をそれぞれ別々に行い,運動中のLRC発生率,酸素摂取量(VO_2)換気効率(VO_2/VE),心拍数等を比較検討した.その結果,自由呼吸での運動に比べ,2:1,3:1リズム呼吸による運動は有意にLRCの発生率,換気効率が高く,心拍数が低いという結果が得られ,本研究で開発したシステムプログラムの有用性が明かとなった.
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