Research Abstract |
廃用性萎縮筋のモデルである後肢懸垂を行う前の運動が筋萎縮に対して予防効果があるのかを検討した.廃用性萎縮の予防対策として,プレコンディショニング運動を行い,ラットヒラメ筋の収縮張力,筋組織内の筋原線維タンパク質含有量,筋組織のミオシン重鎖(MHC)組成,毛細血管構造について検討した.また,運動や温熱負荷により誘導される熱ショックタンパク質70(HSP70)の発現の関連性についても検証した.ラットを1)2週間の尾部懸垂した群(HS),2)HS直前にトレッドミル走行を行い2週間の尾部懸垂をした群(ExHS),及び3)対照群(CONT)に分類した.筋張力(twitch)はCONTと比較して,HSとExHSは共に減少を示した.しかし,筋張力(tetanus)ではHSと比較して,ExHSは+23%の高値を示した.また,筋原線維タンパク質量及び遅筋型I/βMHCは尾部懸垂したHSとExHSでは有意に低下を示した.しかし,HSに比較し,ExHSでは有意に高値を示し,筋原線維タンパク質量及び遅筋型I/βMHCの減少を抑制できた.毛細血管構造では廃用性筋萎縮により毛細血管密度は有意な低下を示し,内径が有意に縮小,吻合毛細血管数も有意に減少していることが観察された.しかし,ExHSにおいては,HSと比較して有意に毛細血管密度が高く,内径および吻合毛細血管数も有意に高いことが観察された.毛細血管の蛇行性も温存されていることが,共焦点レーザー顕微鏡像より確認された.また,HSP70はHSで低下したが,ExHSでは有意に高値を示した.これらの結果からプレコンディショニング運動はラット骨格筋における廃用性萎縮の進行を予防できることを検証できた.また,その予防効果の背景として,分子シャペロンであり,タンパク質保護作用を有するHSP70の関与が示唆された.
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